うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

RMKのメイクレッスン

美人の友達から「RMKのメイクレッスンがめっちゃいいから行った方がいい」と強く勧められたので、こないだ体験した。これがものすご〜くよかったので、記録もかねてレポしておきたいと思う。

 

RMKでは、ブランドの専属メイクアップアーティストが全国の店舗を巡回しており、予約制で1時間じっくりフルメイクしながらいろんなアイテムを使ってメイクテクニックを丁寧に教えてくれるサービスを実施しているのである。私はここで一度も何も買ったことなかったけど、神戸大丸のカウンターに予約してみた。

 

www.rmkrmk.com

 

予約の電話をかけると「当日はベースからのフルメイクになるので、できるだけ素顔でお越しください」と言われる。すっぴん!

まあわたし、家で1日中チクチク原稿書くことも多いので、しょっちゅう1日中すっぴんで過ごすし、そのまま近所のスーパーやコンビニに行くことに対しては全然抵抗ないんだけど、その日は午後から予定があり、それなりにおしゃれして出かけるつもりだったので、正直、すっぴんで行くのいややなーと思った。しかし、これがなかなかよかったのである。結果的に。

 

当日の朝、いつもより丁寧に洗顔して、髪を整えて好きな服を着て鏡を見たら別に何の違和感もなくて、ちょっと高校生みたいな気分になった。夫に「どう?」と聞いたら「いつもよりいい」と言われたのはどうかと思うけど、顔に何もつけずに7cmヒールを履き、よそゆきの服を着る、というのがこんなに爽快とは知らなかった。

 

実際、実は化粧ってどうしても「顔に汚れを塗りつけている」面があり、化粧で見た目が不潔になってしまうことは少なくない。まぶたに黒いものを塗り、まつげにダマをつけ、眉毛に粉をまぶす。拡大鏡で見れば粉は肌に密着などせずに浮いているし、その粉は時に服まで汚す。

 

肌の調子の悪い時などは、余計に化粧で顔が汚れるような気がする。朝の顔はまだましとして、昼下がりなどにトイレで鏡を見て自分の汚さにぎょっとしてしまうことがある。それなのに「化粧は礼儀」が一般常識化しているのも変な話だが、それでも「すっぴんよりましか……」とメイクをし続ける。それによってきれいになっているかどうかは微妙なものだが、武装としてはまあまあ役に立つからね。

そんなこといいながらも、私はメイクが割と好きな方なのだけど、それでもなかなかメイクで本当にきれいになるのは難しい。世間でもメイクでかえって美しさを減じている人をよく見かけるもんね。

 

メイクレッスンの日にすっぴんの爽快さを知るとは、逆説的でなかなかよい。めっちゃ気分よく、いつもより姿勢よく大股歩きぐらいの勢いで大丸に着いた。

 

カウンターでは「素顔ですか?」と聞かれ「そうです」と答えると「素顔だとマスクしてこられるお客様が多いんですけど、そのままですねー」と言われて、なるほど、化粧の代わりにマスクをするという発想があるのかと驚いた。ご近所でいつもマスクしている人がいるので体が弱いのかと思っていたけど、あれはひょっとして素顔隠しなのかな。もったいない。気持ちいいのに……。

 

カウンターに座ると、めっちゃ美肌でつやつやピカピカの若い男性美容部員が、まず丁寧にスキンケアをしてくれて「肌が柔らかい」と褒められる。確かに私は肌の質感はイマイチだけど柔らかいのは柔らかいかもしれぬ。

 

そしてメイクアップアーティストさんにバトンタッチ。

目鼻立ちのくっきりした男性で、グイグイしたキャラじゃなく、あくまで控えめで穏やかなのが好ましい。

で、感動したのがこの方のハンドタッチです。もう、めちゃくちゃ気持ちいいのですよ。人の肌を触るお仕事をしていると、人の肌を触るのに適した手に進化するのかな? それとも生まれ持った資質なのか。おそらく両方なのだろうけど、見た目より指先の面積がすごく広く感じて、吸い付くようなのにベタベタしておらず、すんごい気持ちいい。

脳の機能を模式化した「ホムンクルス」ってあるじゃないですか。このとき、私の頭にはあれが思い浮かんだ。手を使う仕事をしてるひとは手指を司る脳の部分がすごく発達しているというけれど、この人も絶対にめちゃくちゃ発達しているはずだ。とにかく初めて体感するレベルの繊細な指先のジェントルなタッチ。もうこれだけで来た値打ちあったと思いましたね。

 

RMKではメイクの素肌感を大事にしている、とのことで、均一、均質にファンデを塗ることは基本的にしないそう。気になるところは隠すけど、あとはできるだけ持ち前の肌を個性を生かす。

私はそばかすと小さいシミが結構あって、色がまあまあ黒いので、割とカバー力のあるファンデを使いがちなのだけど「肌が柔らかくて水分も十分だからファンデは少なめ、ポイント使いでいいですよ。その方がフレッシュな感じになります」と言われて、水みたいにゆるいベースと水みたいなリキッドファンデをほーんの少し、ブラシで塗ってくれた。するとあら不思議、そばかすなどは隠れないものの、不思議な若々しさと透明感が出るではないですか。

 

そして一番感動したのが次。取り出したるは、3色のコンシーラーとブラシ2種がセットされたコンシーラーパレット。この中で一番色の濃いやつを小さいブラシに取り、小さいけど一番濃いシミに「ちょん!」と乗せたら一瞬でシミが消え失せたではないか。

「シミは、肌よりも濃いコンシーラーでちょっと押さえるのがコツです。塗りすぎたら余計に目立つので」とのこと。ほえー、知らんかった。で、ベースの仕上がりはすっぴんに見えるほどの素肌っぽさなのに、素顔より全然きれい。

でも、これで終わらない。

私は目の下がちょっとたるんでて、特に左目の下のそれが強くて疲れた感じに見えやすいのだけど、彼は鏡の中の私をじっと見た後「ここがちょっと気になりますね」といったかと思うと、コンシーラーの一番白いやつをブラシにとり、その目の下の、たるみからちょっと離れた場所をサッとなでた。するといつも気になる目元の影がパッと明るくなったではないか!!

他にもあれこれコツを教えてもらったのだけど、キャパオーバーして覚えられんかった。とにかく自分比で3歳ぐらい若返ってうきうき。

 

そのあとは眉やアイメイク。これがまた素晴らしかったのよ。

「まつげはグイッと上げちゃっていいですか」といわれ「もちろん」とうなずくと、ビューラーでほんの軽〜くはさんでもらって目を開けたらもうびっくりするぐらい目がパッチリしてるの。アイメイクなしのビューラーのみですよ。私はもともと弱小まつげで、かつてエクステしたときも、一番本数の少ないコースを選んだのに「つけきれずに余りましたので返金します」と言われるぐらい本数も少ないし、短い。なのに、エクステしたときよりもまつげ長く見えるし! プロってすごい。

で、順番が前後するんですが、と断られた上で、まずマスカラをつけてくれた。濃いネイビー。

「マスカラだけでアイラインみたいな効果が出るので、シャドーをつけるまえにそれを実感してもらおうと思って」とのこと。確かに、ちゃんと上がったまつげにマスカラをきれいに塗ると、アイラインを引いたような雰囲気になる。これだけで十分仕事に行ける。

さらに、ラメの入ったブラウンのシャドーをふわっとまぶたに置くと、さらに目元がぱ〜っと華やかになるんですよ。

シャドーはアイホール全体に薄い色、それから目元に向かって濃い色を面積を小さくしながら重ねていくものかと思っていたけど、彼がいうには、もっと自由に好きな色をミックスしていいと。で、そのあとはラベンダーみたいな淡い色を重ねて可愛いグラデーションが生まれ、まつげの少ない目尻と目頭だけに少しラインを足すだけで、いつもよりずっとナチュラルなのにくっきりした目元になった。

ほかにも眉だとか頬とかを何だかんだとしてくれたのだけど、とにかく肌と目元にはとても感動した。

嬉しくなってローション、シャドー2色、マスカラ、眉マスカラ、コンシーラーを購入。でも、全部合わせてお会計は2万円ぐらい。デパコスとは思えない良心的な価格ではありませんか。カウンセリングシートももらえます。

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ここで習ったメイクは全然顔を汚すものじゃなかった。

「顔」という、誰もが持っているオリジナリティの高い絵に、色や光をプラスして、さらに完成度を高めるアート活動のようだった。

だから終わった後がまためちゃくちゃいい気分で、この日はとても美人な気持ちで過ごすことができた。選んでくれたシャドーの色は、その日の服にもよく合っていて、外は雨だったのだけど、足取りも軽やか。

 

ほんと、メイクがマンネリでいまいちうまくできない人は、絶対に行った方がいい。メイクのアップデートをすると、ちょっと自分が生まれ変わったような気分。プロの力を借りるって、本当に素晴らしいなと思った経験だった。

 

みんな行けばいいよ〜!

KILLER QUEEN

大好きなQUEENの「KILLER QUEEN」の歌詞を和訳してみた。

特に理由はないけど……。

ただそれだけ(笑)

 

 

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シャンパンはいつも冷えてるし
「ケーキでもいかが?」って
マリー・アントワネットかよ
大統領だって手玉にとれる
誰にもイヤとは言わせない

キャビアをつまみに葉巻くゆらし
礼儀作法もパーフェクト
くそやばい、やばすぎる女

あの女こそがキラー・クイーン!
毒かと思えば甘いデザート
ダイナマイトは花火の代わり
おまえごときは秒で爆発や

ハマったら底なし沼やけど
中身を思えば高くない
とりあえず味見してみたらええねん

めんどくさいのが死ぬほど嫌いで
いつもふらふら住まいを変える
貴族みたいな顔してるけど
ゆきずりの男の前では
むっちゃくちゃエロいから
一発やってみたらわかる
すごいもん見れるから

香水はおフランス、とかゆーてるし
安い車は小馬鹿にするし
むちゃくちゃ好みにうるさいけど

あの女こそがキラー・クイーン!
毒かと思えば甘いデザート
ダイナマイトは花火の代わり
おまえごときは秒で爆発や

うまいことツボをついたら
可愛い子猫ちゃんに変身!
けど、下手こいたら
一瞬でマグロが出現!

てか、もうその頃には
おまえごときはメロメロで
ふにゃふにゃでヘロヘロや

あの女こそがキラー・クイーン!
毒かと思えば甘いデザート
ダイナマイトは花火の代わり
おまえごときは秒で爆発や

なんしか、やってみたらええねん!
やってみたらええねん!

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Greatest Hits

Greatest Hits

 

 

『阪急電車』今津線各駅下車の旅(11)3たびめの西宮北口駅と星新一 ※完結

そして降り立ったのは、3たび目の西宮北口駅である。

 

乗換駅だし、住宅地の中の駅ということもあり、駅構内にはスイーツ屋さん、花屋さん、雑貨屋さんなどのお土産系、喫茶店などの待ち合わせ系のショップが充実している。時計広場とベンチもある。書店もある。阪急系の書店「ブックファースト」である。

せっかくなので、今津駅で話した星新一の本を今日の記念に買ってあげるよ、と娘に伝えて本屋に立ち寄る。駅構内のコンパクトな書店にも、ちゃんと星新一はある。えらいなー。

でも、文庫の棚を眺めてびっくりしたのは、そのほとんどの装丁画が、もはや真鍋博のものではなくなっていたことだ。星新一といえば真鍋博なのに……。

というわけで、棚にあった新潮文庫のうち唯一、表紙に真鍋博のイラストが使われていた『悪魔のいる天国』を買う。

 

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その場で冒頭の一作だけ読んだ娘は「1話みじかっ!」とびっくり。そうやろー。電車の中で読むのにぴったりやで。

 

有川浩のコーナーも確認したところ、残念なことに『阪急電車』がない。でも、書棚に一冊分だけ空白ができていたので、直前に誰かが買ったのかもしれない。西宮北口駅の構内で『阪急電車』を買うの、いいよね。

 

駅構内ではもうひとつ寄り道をする。日本盛の「しぼりたて生原酒直売所」だ。

日本盛といえばカップ酒みたいなイメージかもしれないけれど、灘五郷のうち、西宮郷に本拠を置く酒造メーカーであるからして、ここ西宮では地酒なのである。地元でしか買えない生原酒、フレッシュでおいしい。駅構内にこういうスタンドがあるのっていいよなあー。

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ちなみに日本盛の生原酒は甲子園でも売り子さんから買える。

これ、こないだ観戦したときの写真なのですが、野球見ながら日本酒を飲むのってなかなかいい。みんなもっと飲んでほしいなー。

 

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さすがに日も暮れて、最寄り駅に降り立つと、月がきれいに見えていた。

 

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娘はずっと「楽しかったー」と言っている。

移動距離もちょっとだし、そもそもご近所なんだけど、とっても充実した旅だった。時空を一緒に移動したような感じがして、わたしもすごく楽しかった。

 

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帰宅後は、生原酒で晩酌しながら、娘とあれこれ振り返る。本当にいい日でした。

ちなみに娘は今度、東京神田・神保町を散策したいんだって。七尾与史という作家の(わたしはよくしらない)『すずらん通りベルサイユ書房』という本の舞台が神保町だかららしい。

いつになるかなー。でも、きっと行こう。

 

 (了)

 

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

 
悪魔のいる天国 (新潮文庫)

悪魔のいる天国 (新潮文庫)

 

 

 

※後になればなるほどぐだぐだになったけど、完結できてよかった!(笑)

『阪急電車』今津線各駅下車の旅(10) ふたたびの今津駅と哀愁の阪神国道駅

久寿川駅から一駅だけ乗って、また今津駅に戻ってきた。
お腹が空いたから駅前で串カツでも食べよう、というわけである。

 

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むっちゃ歩いたのでビールがうまい。

串カツの黄金ルールは「ソースの二度づけ禁止」。テーブルの上にはソースをなみなみとたたえた箱が置いてあり、串カツをここに一度だけつける。かじったあとはつけちゃダメ。当たり前ですね。

 

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といっても、わたしはこまめにつけたいタイプなので、本当はこの方式は好きじゃなく、ソース差しに入ったソースを小皿でかけて食べたい派なんですけどね。

娘と2人であれこれ食べて、お腹が満足したら元気が出てきたし、初夏の日は長い。
せっかくなので降りそびれた阪神国道駅にも行ってみようと、ふたたび阪急今津駅の改札をくぐる。

 

そして阪神国道駅。改札を出たらいきなりこの光景である。なんかええなあ。

 

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こんな駅、降りたことないと思っていたけど、降りて気づいた。降りたことあった。
ここにはアサヒビール西宮工場があったのだ。仕事で一度取材に来た。できたてのビールがとてもおいしかった。

阪神国道」の別名があるという国道2号線沿いに、その跡地は今も寒々とその姿をさらしている。数年前まで、ここに巨大なビールのタンクがいくつも並んでいたなんて、もう想像できないな。病院が建つという話だが、いつできるのだろうか。

 

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空き地に巡らされたフェンス越しに阪神国道駅のホームが見える。なかなか味わい深い光景ではないか。

 

2号線をまたぐ高架線にはこのような巨大な表示がある。

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「阪急 阪神国道駅」という、一瞬、何を言っているのか意味が分からない表記がなんともよい。しかし、地元の人には何の疑問もない。ここにはよそ行きの顔がまるでないのだ。

 

阪神国道駅今津駅西宮北口駅の中間にあり、南行きと北行きがそれぞれの始発駅から同時に出発するので、真ん中の阪神国道駅でこのようにすれ違う。六甲山の登山ケーブルカーのようである。

 

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そして、車窓から空き地を望む。暮れてきた。

 

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(つづく)

 

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

 

 

『阪急電車』各駅下車の旅(9)酒と虎の今津駅

次は今津ゆきのホームへ向かう。

 

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このホームに来るのは何年ぶりだろうか。大阪─神戸間は、阪急電車神戸線JR神戸線阪神本線がほぼ平行して東西に走っているが、南北の連絡は極めて悪く、最も北側(山手)を走る阪急電車と、最も南側(浜手)を走る阪神電車を連絡する唯一の鉄道路線がこの阪急今津線となっている。そして、終着の阪急今津駅が、阪神今津駅に連絡しているのだ。

 

西宮北口阪神国道−今津]の3駅だけを折り返すこの電車に乗った記憶は数少ないが、運行本数も少なく、乗客もまばら……という勝手なイメージがあったのに、いざホームに来てみるとたくさん人が待っているし、電車も10分おきに出ていた。普通に便利やん。誤解してました。すみません。

 

今津線全駅下車を目標としていたが、いい加減疲れていたので、阪神国道は飛ばそーか、ということで今津に向かう。北側の今津線とムードのまったく違う高架線。生活感から浮遊した街の風景の上澄みを車窓から眺める。

しかし、出発したらすぐに終着だ。乗車時間はわずか3分。

阪急今津駅に着くと、構内に宝塚市出身のイラストレーター、中村祐介のラッピング車両のポスターが貼ってあった。娘がそれを見て「この人の絵、好き〜」という。好きな本の装丁画を描いているのだそうだ。ビビッドな色使い、フラットな線、無機的な雰囲気。わたしはそれらのイラストを見て、星新一の装丁画家としておなじみの真鍋博を思い出す。好きだったなあ、星新一。エフ氏やエヌ氏が暮らす未来には、固有名詞から解放された清潔感があった。しかし、星新一の予言が色々と的中している現在、あのような清潔感と目の前の現実は遠い。それは、いいことでもあり、悪いことでもある。

娘とそんな話をしながら、阪急−阪神の連絡通路を抜けて外に出る。

 

同じ西宮でも北の方と南の方では風景が見事に変わる。

 

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阪神今津駅前から続く通りに並ぶのは、串カツ、タコ焼き、お好み焼き……と、完全にラインナップが大阪である。兵庫県東部沿岸には大阪府が侵食しているのだ。阪神タイガースの意匠も頻繁に見かける。ここから東に2駅先には聖地・甲子園がありますからね。

 

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駅前の地図をちょっとだけ見て、「酒蔵通り」でも歩くか、と南をめざす。

この一帯は、江戸時代からの酒どころ「灘五郷」の最東端に位置する「今津郷」なのである。

 

西に曲がれば、お隣の「西宮郷」の観光酒蔵がいくつかあるのだが、わたしたちは東に曲がる。今津に来たんだから今津郷の風景を見ないとね。

 

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明治時代に小学校の校舎として建てられたという可愛らしい六角堂、酒蔵のまちの和菓子店、大関の風格ある看板、路傍のあじさい……。

 

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大関の工場の屋上にも赤い鳥居が見えた。

 

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疲れてきたので今津に戻らず、そのまま北にのぼって久寿川駅へ。

阪神電車は駅の数が多く、それぞれが個性的で面白い。この駅は児童公園に面した可愛い駅で、使ったのはたぶん初めて。ホームの窓から公園の緑がこんなに近く見えるなんて、なかなか素敵じゃないですか。

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車体を斜めにしながら、普通電車がホームに入ってきた(阪神電車はだいたいいつも斜めになっている)。青い大きな水玉模様が特徴的なジェット・シルバー5700。つい最近導入された新しい車両かと思っていたら、デビューは2015年らしいですね(などと書いておいて写真はない)。

 ……って、もしいい加減なこと書いてたら鉄ちゃん各位には申し訳ありません。。

 

(つづく) 

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

 

 

『阪急電車』今津線各駅下車の旅(8)西宮北口でタコ焼きを食べる

西宮北口駅に戻ってきた。

 

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西宮北口駅は、東西の神戸線、南北の今津線が交差する乗換駅だが、今津線の線路はこの駅で分断されていて、北行き、南行きはそれぞれ違うホームから折り返し運行されている。

 ホームから階段を上がると、上階は広いフロアになっていて、東西南北にそれぞれに改札がある。どの出口も雰囲気が似ていて、もともと方向音痴のわたしは絶対にここで方向感覚が狂ってしまう。

 

大学生の頃は西宮球場がまだあり、球場のある南側はとても殺風景だったので、店が密集した北側と間違えることはなかったが、阪神・淡路大震災後にごちゃごちゃした古い市場が整理され、再開発ビル「アクタ西宮」ができ、西宮球場跡にイオンモールと阪急百貨店がくっついた巨大な商業施設「西宮ガーデンズ」ができ、オペラを上演できるホールを備えた「兵庫県立芸術文化センター」ができ……と、駅のまわりが続々と新しい建物で埋められてゆくにつれ、どんどん方角が分からなくなっていった。

 

しかし、ここではタコ焼きを食べるというミッションがある。小説に登場するカップルがここでタコ焼きを食べるからである。いや、その前に、どっかの通路から、どっかのビルの屋上にある鳥居を見つけなければならない。作中では、大学生の男子が気のある女子と仲良くなる口実として、通路から見える「ビルの屋上の鳥居」を「ちょっと妙な光景」として見せるシーンがあるのだ。

 

該当頁を読むと、明らかに西宮北口駅からアクタ西宮へ至る通路を指しているようである。とはいえ、アクタ西宮に至る通路はビルの2階の高さしかない。そこからビルの屋上なんて見えるかなあ、なんて思いながらキョロキョロしたら、あった。普通にあった。
(写真は、アクタの上階から撮ったものです)

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鳥居を見た娘は大興奮。
「ほんとにあった! あった!」と叫ぶ娘とともに、ビルが見えるエスカレーターを無意味に2往復してしまった。


ビルの屋上に鳥居があるのは珍しいことではないし、それをことさら珍しいもののように描くこのシーンには少々違和感を感じるが、ビルの屋上を眺めるのはわたしも好きだ。たとえば神戸には中国資本系のビルが多いので、神戸市役所の展望ロビーあたりから周囲を見下ろすと、屋上に中華っぽい意匠の祠?のようなものがあちこちに見える。神戸っぽいなあ、と感じる風景のひとつである。

近年屋上緑化が増えたとはいえ、オフィスビルの屋上はまだまだ殺風景なものが多い。そんな中、地上からは見えない屋上にあえてカラフルな意匠が施されているのを見ると、隠された愛を見つけたような気分になって、ちょっと嬉しくなってしまう。

 

興奮を少し冷ましてから、「フードコートのタコ焼き屋」を探してアクタ東館の方に行ってみる。
アクタにフードコートなんてあったっけなーと思いつつ、あるとしたら1階だと思いエスカレーターで下に降りるが、いくつかの飲食店とコープさんの食品売場しかない。もう一度2階に上がると、あった。コープさんの日用品売場の中に、唐突に小さいフードコートがあった。へええええ。知らなかった!

わたしたちは勇んでタコ焼き屋に駆け寄ったが、誰も店員はいなかった。

 

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なんそれ! めちゃ適当やな!(笑)

 

隣のお茶碗売場で「自分が使うとしたらどのお茶碗がいいか」を娘と話しながら10分少々待ったら、日本語が少々カタコトの店員さんが戻ってきた。外国人スタッフがタコ焼き焼くのか〜と妙なところで感動。一皿250円。おいしかったです。

 

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念願のタコ焼きを食べながら、改めて店内を見渡してしみじみした。

まるで古い商店街のような雰囲気ではないか。

 

わたしの学生時代、まだアクタ西宮はなかった。ここら一帯は古い商店がごちゃごちゃに並んだ「戦後」みたいなエリアだったのだ。アーケードのある公設市場があり(市場といっても卸ではなく小売市場である)、しかし、八百屋や肉屋のようないわゆる市場らしい商店は軒並みシャッターを下ろしたままで、かなり寂れた雰囲気だった。その暗い通りの奥には「隠れ家」的なアジアン居酒屋があって、ちょいちょい友人たちと訪れた。店内には各国の雑貨が所狭しと並び、水槽には熱帯魚が泳いでいて、元バックパッカーといった風情の店主がいて、いつも大学生で賑わっていた。

こういう店も、こういうエリアも、いつかなくなるのだろうと当時から漠然と思っていたけれど、その後すぐに阪神・淡路大震災がこのエリアに壊滅的な被害をもたらすことになるとはもちろん想像していなかった。

そして震災から6年を経た2001年、地域再開発でこのビルが建った時には、あまりの風景の激変ぶりに驚いたものだ。しかし、今ではそのアクタ西宮が既に古びて、古い商店街みたいな雰囲気になっている。

 

タコ焼きを食べ終えたわたしたちは西館にも行き、ジュンク堂書店に『阪急電車』が置いてあることを確かめ、無印良品で靴下を買い、また駅に戻った。

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(つづく)

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

 

 

 

『阪急電車』今津線各駅停車の旅(7)門戸厄神駅という欧風概念

東園駅から隣の門戸厄神駅まではすぐやし、歩く?

という提案は娘に即座に拒否され、また1駅ぶん電車に乗る。門戸厄神駅の改札は西側にしかないと思っていたが、東側にも小さな改札があった。こんなんあったっけ?

 

駅を出ると、すぐ横の踏切のところが五叉路になっている。

厄除けの神様として名高い「門戸厄神」は駅の北西方面。そちら側には田園風景が広がっているので、これまで降りた駅の中で、最も駅前の風景に開放感があるというか、平野っぽい広がりを感じさせる。

 

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踏切の脇には西国街道を示す看板が立っている。

いわれてみれば、この風景はとても街道っぽい。大名行列も似合いそうだ。

 

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線路を斜めに横断する旧西国街道と並行するように、ここから少し南に下ったところを国道171号線(いないち、と呼ぶ)が通っている。車の通行量がとても多いいわゆる幹線道路である。

門戸厄神あたりはのんびりした田舎の雰囲気が漂う静かな住宅エリアなので、道を歩いていていきなり171号線にぶつかると、いつも唐突な気がしてびっくりしてしまう。この道路で空気がガラリと変わるからだ。この171号線がひとつの結界となって、宝塚から門戸厄神までの、小説『阪急電車』に描かれているような「北今津線らしさ」を守っているような気がしないでもない。

 

ところで、門戸厄神駅のことは一般的に「もんど」と略するのだが(多分)、それを聞いた娘が「『もんど』はおかしいやろー。日本語に聞こえへん」という。確かにちょっとフランス語っぽい。もんど。MONDE。

大学の最後の方の時期の彼氏がこの駅の近くに住んでいたので、わたしはこの駅で降りる機会も多かったのだけど、このあたりの田園風景の中には「ダイドーメゾン」と大書したマンションがいくつも建っていた。そのオーナー会社のビルもあって、そこにも「DAIDO」とでかでかと書かれていたように思う。「もんど」と「だいどー」。

だから何? という感じだけど、わたしの中ではすごくこの響きがシンクロしていて、「もんど」は「やくじん」とは切り離され、異国的な響きのエッセンスが入った欧風の概念になっている。何言ってるかよく分かりませんね。

門戸厄神に住んでた彼氏とは大学を卒業する前に別れてしまったのだけど、わたしもなにか「討ち入り」みたいなことすればよかったかなー。

 

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ちなみに、次の西宮北口は略して「にしきた」なのだが、最近は「きたぐち」という呼び方が多数派なのだと友人から聞いた。本当だろうか? 西宮北口の重心は明らかに「西宮」の方にあるのに、ただ「北口」なんていったら新宿北口みたいではないか。とはいえ、地名の一部として替えのきかない「西」と、無機質に方角を指しているにすぎない「北」を同等に並列する「にしきた」という略称がぴったりきているとも思わない。そもそも「西宮北口」って名付けが間違っている。「阪急西宮」でよかったのに。でも西宮北口は、いくら発展してもこの名前のおかげで「阪神間の一結節点」的な引いたポジションでいられる感じがあって「いやいや、発展とかめっそうもないっすよ〜。全然三宮とかをおびやかすつもりないですから〜」みたいな舎弟的空気感の演出になってる気もする。しかし実は三宮が気づいていないうちに裏の番長みたいに阪神間の実権を握っているのだ。

 

ともあれ、暑かったので、駅の裏手のファミリーマートで、熱いミルクを入れて溶かして食べるタイプのフラッペを買ってイートインスペースで食べた。期間限定のスイカ味。写真を撮るのは忘れてしまったけど、おいしかった。スイカバーと同じで、チョコの種が入ってるんですよ。

 

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(つづく)

 

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)