うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

伏線のない世界を描く 『15時17分、パリ行き[The 15:17 to Paris]』

監督:クリント・イーストウッド
脚本:ドロシー・ブライスカル
出演:スペンサー・ストーン、アンソニー・サドラー、アレク・スカラトス、ジュディ・グリア、ジェナ・フィッシャー
2018年アメリカ、94分

 

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隅から隅まで好きな、2018年のなおみんのベスト映画はこれ!

実際に列車の中で起きたテロ事件を題材に、実際の事件の関係者を多数俳優として起用した異色作である。ただし私はその程度の事前情報も知らずに見た。それがまたよかった。

主役は、ちょっと情けない風貌の体のでかい色白の青年、スペンサー。これが映画では見たことのないレベルの絶妙な情けなさで、さすが素人を起用しただけのことはある。彼はリアルな米兵で、彼を含む友人3人が、パリ行きの列車の中で重装備したテロリストが企んだ無差別テロを阻止してヒーローになるのである。

しかし映画は意外なことに当日の出来事ではなく、3人の幼少時代から「その日」に至るまでの軌跡に尺をさき、彼らが、学校的な優等生的価値観から常にはみ出しがちな人物であったことをさまざまなエピソードで物語っていく。学校ではいつも怒られ、人徳もなく、親に心配をかけながらも、大きく道を踏み外すことなく3人はなんとか大人になる。

学校を卒業した後もファストフード店でバイト生活を送っていたスペンサーは、あるとき一念発起し、1年間にわたる猛トレーニングを経て軍の試験に受かる。しかし、視覚のちょっとした異常を理由に希望の部署への配属がかなわない。私はこの猛トレーニングのくだりで最初に泣いた。スペンサーは少し自暴自棄になるが、やがて持ち前の鈍感さを発揮して、与えられた任務に向き合い、柔術や救命術を学び、ゆっくりと、しかし着実に任務に必要なスキルを身につけていく。彼はいろんなことがちょっとずつ「遅い」し「鈍い」。が、だからこそ楽な近道を選ばずに愚直に目の前のハードルをクリアしていく能力を有した真面目な好青年なのである。

そしてあるとき、スペンサーの発案で3人は久しぶりに集まってヨーロッパ旅行に出かけることにする。この旅行中に例のテロに遭遇するわけだが、事件が発生するまでの旅行の描写は「だらだら」と形容するのが最も適切といえる悠長さで延々と続く。人によってはこのくだりが意味不明で退屈で耐えられないだろうが、これがもう私は本当に最高だった。

3人の中で一番イケメンで抜け目のない性格のアンソニー・サドラーは旅行中、常に自撮り棒片手にセルフィーを撮っている。スペンサーは観光名所に行くだけで楽しそう。途中、1人旅のアメリカ人女性に声をかけて一緒に食事をするも、特に性的なエピソードに発展するわけでもない。途中、アレクと合流した後は、ビールを飲み、クラブで夜遊びし、二日酔いに苦しむ。ローマ、ヴェニス、ベルリン、アムステルダム……。久しぶりに再開する幼なじみの親友3人組、とはいえ、現在はそれぞれの生活環境も異なり、たびたび会話が途切れながらも、特に険悪になるでもなく旅は続く。

このパートのポイントは、そのすべてがリアルで、同時に、なにひとつとして「未来の出来事の伏線になっていない」ことだ。今まで丁寧に描かれてきたような来歴を持つ若者たち3人が久しぶりに集まった旅行でいかにもありそうな旅のあれこれが、ただただ描かれるのみであって、テロリストを倒した勇敢さの理由は、どこにも描かれていない。だって、この旅は「テロが存在する以前の世界」なのだから。

演技もできない素人を起用したドキュメンタリーまがいの映画など、安っぽい「再現VTR」に過ぎないのではないか、という批判もあるそうだが、それは違う。一見、とても雑に「リアル」をちりばめたように見える映画の中に、実は純度の高い「フィクション」が実に巧妙に埋め込まれている。事件の前日、スペンサーはアムステルダムの街を眺めながら、誰にともなくこんなことをいうのだ。「まるで運命に導かれているように感じるんだ」と。ダラダラとした描写の中でピリリと引き締まったこのシーンはとても印象に残る。
これは、旅程や立ち寄った場所も忠実に再現したという旅の中に、監督がねじこんだフィクションだ。リアルをまぶしてフィクション性を巧妙にくるみ、伏線のない世界の中で、実はすべては伏線であることを鮮やかに示す。誰の人生においても「いまのすべては過去のすべて」なのだ。こんなこと、クリントイーストウッド監督以外の誰にできるのだろうか。

映画の最後に、実際のドキュメンタリー映像を埋め込んであるのもよくてねえ……。
フィクションとノンフィクションのこの素敵なねじれ!
事実を題材にした映画が、往々にしてモノマネに腐心していることをもっと反省してほしい。

 

 

15時17分、パリ行き(字幕版)

15時17分、パリ行き(字幕版)

 

 

2018年に観た映画の超個人的感想

■2018年マイベスト!『15時17分、パリ行き

2018年ベスト。隅から隅まで好き。実際に列車の中で起きたテロ事件を題材に、実際の事件の関係者を多数俳優として起用した異色作。詳しい感想は別途書く。

 

■2018年のベスト王!『バーフバリ 王の凱旋』

バーフバリ! バーフバリ! バーフバリ!
最高すぎる。まじでかっこええ。バーフ様最高。マヒシュマティよ永遠に。象をワイルドかつエレガントに馴致した神々しいお姿を見た瞬間からあなたの虜です!!!! 愛してる!!!!
関連作は以下を観た。全部最高。

 

▷▷▷『バーフバリ 伝説誕生(マサラ上映)』
ジャイホー! 王の凱旋に比べると息子は未熟すぎるけど、でも面白かった。戦争シーンも対戦シーンも最&高。マサラ上映初体験だったので、クラッカーを10個ぐらいしか持って行かなかったのだけど、あほやった。100個でも足りない!!!!! 神戸国際松竹では劇場初のマサラ上映ということだったが、スタッフも親切で泣けた。ほんとうにありがとうー。サホレ!バーフバリ!!!

▷▷▷『バーフバリ王の凱旋・完全版』
バーフバリに恋したその日からYouTubeで動画を見すぎて、どれが完全版だけの映像なのか全然分からなかったけど、とにかく最高だったことは間違いない。完全版だろうとそうでなかろうと、バーフバリの前にバーフバリなく、バーフバリの後にバーフバリなし。いつ見ても最高で泣けるし濡れる。辛いことがあってもわたし、バーフさまの髪が風になびく姿を思い浮かべるだけで生きていける!

 

■2018年のベスト変態『素敵なダイナマイトスキャンダル

いい。よい。GOOD! 柄本佑、最高か!
尾野真千子と原作者の末井昭が歌う奇妙な主題歌(菊地成孔作曲)が耳に残る。女、女、女に依存するマザコンカルチャー映画。柄本佑演じるヘンタイ編集者は、最初はおどおどした若者なのに、最後は心から笑わない苛烈極まりないヘンタイになっていく。その変節を、明示的ではなく描いているのがよい。そして、いつどこでみても前田敦子はよい。尾野真千子もよいが、犬を抱いてるあっちゃんにグッときた。もっと出して欲しかった。三浦透子もよい。よすぎた。

 

■2018年のベスト詩情『君の名前で僕を呼んで

映像といい音楽といいセリフといい、センスありすぎてむかつくぐらいいい。これでもかというほど男子同士イチャイチャ見せつけられてキュン死しそうになった。オリヴァーくんのショートパンツが短すぎるのが実にけしからん! とはいえ、男子同士の純愛の蚊帳の外に置かれ、決して崇高で唯一の存在になれず、代替品として消費されるのにあくまで健気なガールフレンドの存在には身につまされた。長いエンディングの余韻がいつまでも心に残る。

 

== 普通によかった映画 ==

 

『マンマ・ミーア ヒアウィゴー』

出てくる女がほぼ全員ビッチで、かつチャーミングという素敵な映画。ビッチ映画として「ELLE」に次ぐオールタイムベスト2の称号を与えたい。男子もみんなイケメンで目に優しい。ミュージカルにつき、観てると楽しくて体が自然に動く。見心地はインド映画の『恋する輪廻』のよう。この映画で唯一、ビッチではない娘がちゃんと幸せになれるかどうかが心配だが。

 

『クレイジー・リッチ』

2018年の夏にちょうど家族でシンガポール旅行したので、すごいタイムリーやった。中1の娘と一緒に観て、興奮して、笑った。最初から最後までテンポ抜群で抜群に面白い。アジア人100%のキャスティングのハリウッド映画という点も素晴らしい。が、お話としては結婚をゴールにしたウェディングムービーである以上、結婚以降のことに思いをめぐらせざるを得ずモヤモヤしてしまう。原作も読みたいが、読むのか、わたし?

 

オーシャンズ8』

これも中1の娘と一緒に観た。ベスト・オブ・成長期の娘とみる映画。ゴージャスな女たちが活躍して華麗なる犯罪をなしとげる爽快痛快ムービー。

 

孤狼の血

血湧き肉躍る、わしら孤狼じゃけん!
広島を舞台にしたオールドスタイルのヤクザ映画と思いきや、モダンにアップデートされたネオ無頼映画であった。ついつい原作も読んでしまった。原作を読ませてしまう映画はよい映画。原作は(映画とは違って)ちゃんと整合性のあるお話だったのでこれまた面白かった! 得した。

 

寝ても覚めても

生まれて初めて映画のエキストラに応募して、神戸の美術館で東出昌大とすれ違うシーンを撮ってもろたのに、まったく、0.1秒も使われなくて残念やった。わざわざ舞台挨拶付きのプレミアを観に難波まで行ったのにwww 全体として奇妙なタッチではあるけど、あの原作の映画化としてはかなりいいと思う。というのも私は原作がすごく好きなのだ。けど、あの原作(読めば分かる)を、まさかこんな風に映像化できるとは思わんかった。東北のくだりはいらんかったように思うけど。この映画は何しろ唐田えりか。ほんとうに唐田えりかの空虚な目はすごかった。それを見いだした監督の慧眼やな。

 

『焼肉ドラゴン』

最高によいシーンと最高に不快なシーンが共存している映画。家族の物語だが、三姉妹を演じる女優の配役が微妙(に悪い)。ええ女優つかってるのにな。しかし、お父さんを演じる韓国人俳優、キム・サンホは掛け値なしに素晴らしかった。全体としてはいいけど、ところどころ、どうしようもないダメさが散見されてバランスが悪いけれど、そこがいい、といえばそういえないこともない。全体としてはいいような気がする。

 

 

== いい映画なのに覚えてないやつ ==

 

ペンタゴン・ペーパーズ』
いい映画やったよ! でもまじで詳細を覚えてない……。ごめん。

 

『英国総督最後の家』

よいという話を聞いて見にいって、たしかに「いい映画だ!」と思った記憶があるのに、やっぱり全然覚えてない。自分の好みではなかったみたい。こういう良作が記憶に残らない自分が悲しい。

 

 

 ==  微妙〜〜な映画  ==

 

キングスマンゴールデンサークル』

あほくさいながらも面白い映画ではあったのだけど、ロンドンで地下組織として長く継承されてきた由緒あるスパイ機関、とやらが舞台になっていながら、劇中でそのレガシー(とされるもの)が容赦なくぶち壊されていくのが辛すぎて、そりゃあ、映画として意外性を狙って観客を裏切っていくという振る舞いは、サプライズとしてアリなのかもしれないけど、それではいかにも愛がなさすぎではないか、と思ったりした。

 

ボヘミアンラプソディ』

天才フレディ・マーキュリーの魅力が全然丁寧に表現されていない点でどうしても映画に没入できないまま、世間の熱狂に取り残された。でも、クイーンの音楽が鳴ると、そういうのももうどうでもよくなるという。そないにモノマネがうまくなくてもええから、天才の映画では天才性の根源みたいなものを見せてほしいんやけどな。

 

== 気〜悪かった映画  ==

 

シェイプ・オブ・ウォーター

キモい。嫌い。てか、最初見終わったときは「これは吉本新喜劇やなー」と思って笑ってただけやけど、世間にラブロマンスだとして受容されていると知ってがぜんキモくなった。ラブロマンスとしては説得力ゼロでしょ。ギレルモ・デル・トロは『パンズ・ラビリンス』も苦手なので個人的に全く相性が合わない。あたしは、あの魚人は「Born Sexy Yesterday」やと思う。見た目がグロかったらそんな陳腐な話でもええのかというガッカリ感。

 

カメラを止めるな!

映画オタクがちまちま身内で楽しんでキャッキャしている感じに疎外感を感じて居心地が悪かった。あらまあ、そっちはたのしそーでいいですねーと鼻ほじりながらいいたい感じ。わたしはそもそも三谷幸喜とか宮藤官九郎みたいなチマチマした内輪ウケ狙いの「ウェルメイド」が嫌いで、これもその系譜やと思う。でも、ヒットしたことはめでたいと思います。役者はすごいよくて、監督、その妻、その娘にはたいへん好感を持ちました。

 

『斬、』
平成も終わろうというのに、なんでフロイト先生のファルス的精神分析世界をみせられなあかんのか。というぐらい男根メタファーに満ちあふれた男根映画。そして、何も始まらないまま終わる。とりえあず女に叫ばせるのも最低か。きもー。きもー。短いのが美点。ファルスではなく上映時間が。

 

 

書くほどもない戦争と父の記憶の断片

もう両親に会うのも正月や盆だけだし、帰省したときには、できるだけ昔の話を聞こうと思うのだが、だらだら食べたり飲んだりしてたら聞き忘れてしまう。
母とのなれそめ(笑)などは、古いアルバムをめくりながらこれまでもよく聞いたのだが、今回は戦争の記憶についてちょっと聞いてみた。

 

父は戦中、といっても昭和17(1942)年2月の生まれなので、終戦時点でわずか3歳半。奈良の山奥で暮らしていたこともあり、空襲などに遭うこともなく、戦争についての直接的な記憶はほぼないという。


唯一覚えているのは、おそらく昭和19年ごろに、広島のどこかのなにがし隊に入営していた父(わたしの祖父)に面会するために、母(わたしの祖母)におぶわれて西吉野村から広島に向かった雨の夜のことだそうだ。
父の生家から最寄りの下市口駅までは山道を10km強。始発に乗るために丑三つ時に家を出て、提灯を提げた親戚の男に先導を頼み、雨にぬかるむ真っ暗な山道を往ったのだという。幼児をおぶった女の足でいったいどれぐらい時間がかかったのか、その不安と、前方で揺れる光と、雨の冷たさだけを記憶していると。
その後、無事に広島に着いた後にどこかで船に乗ったことをかろうじて覚えているけれど、肝心の面会の記憶はなく、次の記憶は、終戦後に兵役を終えた祖父がお土産の金平糖をぶらさげて帰ってきたことだ。終戦の翌年には父の弟が生まれている。
この祖父については、わたしが小さいころに亡くなっているので、わたしは直接覚えていない。

もうひとつ、父の戦争にまつわる記憶は、終戦後にアメリカの飛行機が村の上空にやってきて、モールのようなものをばらまいたこと。木々の先っぽにキラキラ光るモールがひっかかって、クリスマスツリーのようになったそうだ。ビラなり物資なりも一緒に落とされたのかもしれないが、子どもだった父にその記憶はなく、その詳細はよくわからない。

 

書くほどもない、といえばその通りなんだけど、なにかわたしの心を揺さぶる話ではある。

というのも、このとき父をおぶった父の母(わたしの祖母)は89歳まで生きたのでわたしもよくよく知っているが、父との折り合いが非常に悪かった。孫のわたしから見ても祖母は意地悪で怠慢なひとで、よくあの祖母からこの父が生まれたなあと感心するぐらいなのだが(父はとてもまめで勤勉で親切なひとだ)、父は最後までこの祖母の面倒をよくみて送った。
直接的な愚痴を父の口から聞いたことはないが、言葉の端々に色々と複雑な思いがあったことは見て取れる。

あの祖母が、この父をおぶって、真夜中の山道を、ほかの子どもがまだ産まれていない頃、戦中に母ひとり子ひとりで、夫に会うために走ったのだなあと。不安に感じた父が、唯一のよすがとして祖母の背中にしがみついていたのだなあと。それが70年以上も経った今、記憶に残っているのだなあと。

 

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RMKのメイクレッスン

美人の友達から「RMKのメイクレッスンがめっちゃいいから行った方がいい」と強く勧められたので、こないだ体験した。これがものすご〜くよかったので、記録もかねてレポしておきたいと思う。

 

RMKでは、ブランドの専属メイクアップアーティストが全国の店舗を巡回しており、予約制で1時間じっくりフルメイクしながらいろんなアイテムを使ってメイクテクニックを丁寧に教えてくれるサービスを実施しているのである。私はここで一度も何も買ったことなかったけど、神戸大丸のカウンターに予約してみた。

 

www.rmkrmk.com

 

予約の電話をかけると「当日はベースからのフルメイクになるので、できるだけ素顔でお越しください」と言われる。すっぴん!

まあわたし、家で1日中チクチク原稿書くことも多いので、しょっちゅう1日中すっぴんで過ごすし、そのまま近所のスーパーやコンビニに行くことに対しては全然抵抗ないんだけど、その日は午後から予定があり、それなりにおしゃれして出かけるつもりだったので、正直、すっぴんで行くのいややなーと思った。しかし、これがなかなかよかったのである。結果的に。

 

当日の朝、いつもより丁寧に洗顔して、髪を整えて好きな服を着て鏡を見たら別に何の違和感もなくて、ちょっと高校生みたいな気分になった。夫に「どう?」と聞いたら「いつもよりいい」と言われたのはどうかと思うけど、顔に何もつけずに7cmヒールを履き、よそゆきの服を着る、というのがこんなに爽快とは知らなかった。

 

実際、実は化粧ってどうしても「顔に汚れを塗りつけている」面があり、化粧で見た目が不潔になってしまうことは少なくない。まぶたに黒いものを塗り、まつげにダマをつけ、眉毛に粉をまぶす。拡大鏡で見れば粉は肌に密着などせずに浮いているし、その粉は時に服まで汚す。

 

肌の調子の悪い時などは、余計に化粧で顔が汚れるような気がする。朝の顔はまだましとして、昼下がりなどにトイレで鏡を見て自分の汚さにぎょっとしてしまうことがある。それなのに「化粧は礼儀」が一般常識化しているのも変な話だが、それでも「すっぴんよりましか……」とメイクをし続ける。それによってきれいになっているかどうかは微妙なものだが、武装としてはまあまあ役に立つからね。

そんなこといいながらも、私はメイクが割と好きな方なのだけど、それでもなかなかメイクで本当にきれいになるのは難しい。世間でもメイクでかえって美しさを減じている人をよく見かけるもんね。

 

メイクレッスンの日にすっぴんの爽快さを知るとは、逆説的でなかなかよい。めっちゃ気分よく、いつもより姿勢よく大股歩きぐらいの勢いで大丸に着いた。

 

カウンターでは「素顔ですか?」と聞かれ「そうです」と答えると「素顔だとマスクしてこられるお客様が多いんですけど、そのままですねー」と言われて、なるほど、化粧の代わりにマスクをするという発想があるのかと驚いた。ご近所でいつもマスクしている人がいるので体が弱いのかと思っていたけど、あれはひょっとして素顔隠しなのかな。もったいない。気持ちいいのに……。

 

カウンターに座ると、めっちゃ美肌でつやつやピカピカの若い男性美容部員が、まず丁寧にスキンケアをしてくれて「肌が柔らかい」と褒められる。確かに私は肌の質感はイマイチだけど柔らかいのは柔らかいかもしれぬ。

 

そしてメイクアップアーティストさんにバトンタッチ。

目鼻立ちのくっきりした男性で、グイグイしたキャラじゃなく、あくまで控えめで穏やかなのが好ましい。

で、感動したのがこの方のハンドタッチです。もう、めちゃくちゃ気持ちいいのですよ。人の肌を触るお仕事をしていると、人の肌を触るのに適した手に進化するのかな? それとも生まれ持った資質なのか。おそらく両方なのだろうけど、見た目より指先の面積がすごく広く感じて、吸い付くようなのにベタベタしておらず、すんごい気持ちいい。

脳の機能を模式化した「ホムンクルス」ってあるじゃないですか。このとき、私の頭にはあれが思い浮かんだ。手を使う仕事をしてるひとは手指を司る脳の部分がすごく発達しているというけれど、この人も絶対にめちゃくちゃ発達しているはずだ。とにかく初めて体感するレベルの繊細な指先のジェントルなタッチ。もうこれだけで来た値打ちあったと思いましたね。

 

RMKではメイクの素肌感を大事にしている、とのことで、均一、均質にファンデを塗ることは基本的にしないそう。気になるところは隠すけど、あとはできるだけ持ち前の肌を個性を生かす。

私はそばかすと小さいシミが結構あって、色がまあまあ黒いので、割とカバー力のあるファンデを使いがちなのだけど「肌が柔らかくて水分も十分だからファンデは少なめ、ポイント使いでいいですよ。その方がフレッシュな感じになります」と言われて、水みたいにゆるいベースと水みたいなリキッドファンデをほーんの少し、ブラシで塗ってくれた。するとあら不思議、そばかすなどは隠れないものの、不思議な若々しさと透明感が出るではないですか。

 

そして一番感動したのが次。取り出したるは、3色のコンシーラーとブラシ2種がセットされたコンシーラーパレット。この中で一番色の濃いやつを小さいブラシに取り、小さいけど一番濃いシミに「ちょん!」と乗せたら一瞬でシミが消え失せたではないか。

「シミは、肌よりも濃いコンシーラーでちょっと押さえるのがコツです。塗りすぎたら余計に目立つので」とのこと。ほえー、知らんかった。で、ベースの仕上がりはすっぴんに見えるほどの素肌っぽさなのに、素顔より全然きれい。

でも、これで終わらない。

私は目の下がちょっとたるんでて、特に左目の下のそれが強くて疲れた感じに見えやすいのだけど、彼は鏡の中の私をじっと見た後「ここがちょっと気になりますね」といったかと思うと、コンシーラーの一番白いやつをブラシにとり、その目の下の、たるみからちょっと離れた場所をサッとなでた。するといつも気になる目元の影がパッと明るくなったではないか!!

他にもあれこれコツを教えてもらったのだけど、キャパオーバーして覚えられんかった。とにかく自分比で3歳ぐらい若返ってうきうき。

 

そのあとは眉やアイメイク。これがまた素晴らしかったのよ。

「まつげはグイッと上げちゃっていいですか」といわれ「もちろん」とうなずくと、ビューラーでほんの軽〜くはさんでもらって目を開けたらもうびっくりするぐらい目がパッチリしてるの。アイメイクなしのビューラーのみですよ。私はもともと弱小まつげで、かつてエクステしたときも、一番本数の少ないコースを選んだのに「つけきれずに余りましたので返金します」と言われるぐらい本数も少ないし、短い。なのに、エクステしたときよりもまつげ長く見えるし! プロってすごい。

で、順番が前後するんですが、と断られた上で、まずマスカラをつけてくれた。濃いネイビー。

「マスカラだけでアイラインみたいな効果が出るので、シャドーをつけるまえにそれを実感してもらおうと思って」とのこと。確かに、ちゃんと上がったまつげにマスカラをきれいに塗ると、アイラインを引いたような雰囲気になる。これだけで十分仕事に行ける。

さらに、ラメの入ったブラウンのシャドーをふわっとまぶたに置くと、さらに目元がぱ〜っと華やかになるんですよ。

シャドーはアイホール全体に薄い色、それから目元に向かって濃い色を面積を小さくしながら重ねていくものかと思っていたけど、彼がいうには、もっと自由に好きな色をミックスしていいと。で、そのあとはラベンダーみたいな淡い色を重ねて可愛いグラデーションが生まれ、まつげの少ない目尻と目頭だけに少しラインを足すだけで、いつもよりずっとナチュラルなのにくっきりした目元になった。

ほかにも眉だとか頬とかを何だかんだとしてくれたのだけど、とにかく肌と目元にはとても感動した。

嬉しくなってローション、シャドー2色、マスカラ、眉マスカラ、コンシーラーを購入。でも、全部合わせてお会計は2万円ぐらい。デパコスとは思えない良心的な価格ではありませんか。カウンセリングシートももらえます。

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ここで習ったメイクは全然顔を汚すものじゃなかった。

「顔」という、誰もが持っているオリジナリティの高い絵に、色や光をプラスして、さらに完成度を高めるアート活動のようだった。

だから終わった後がまためちゃくちゃいい気分で、この日はとても美人な気持ちで過ごすことができた。選んでくれたシャドーの色は、その日の服にもよく合っていて、外は雨だったのだけど、足取りも軽やか。

 

ほんと、メイクがマンネリでいまいちうまくできない人は、絶対に行った方がいい。メイクのアップデートをすると、ちょっと自分が生まれ変わったような気分。プロの力を借りるって、本当に素晴らしいなと思った経験だった。

 

みんな行けばいいよ〜!

KILLER QUEEN

大好きなQUEENの「KILLER QUEEN」の歌詞を和訳してみた。

特に理由はないけど……。

ただそれだけ(笑)

 

 

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シャンパンはいつも冷えてるし
「ケーキでもいかが?」って
マリー・アントワネットかよ
大統領だって手玉にとれる
誰にもイヤとは言わせない

キャビアをつまみに葉巻くゆらし
礼儀作法もパーフェクト
くそやばい、やばすぎる女

あの女こそがキラー・クイーン!
毒かと思えば甘いデザート
ダイナマイトは花火の代わり
おまえごときは秒で爆発や

ハマったら底なし沼やけど
中身を思えば高くない
とりあえず味見してみたらええねん

めんどくさいのが死ぬほど嫌いで
いつもふらふら住まいを変える
貴族みたいな顔してるけど
ゆきずりの男の前では
むっちゃくちゃエロいから
一発やってみたらわかる
すごいもん見れるから

香水はおフランス、とかゆーてるし
安い車は小馬鹿にするし
むちゃくちゃ好みにうるさいけど

あの女こそがキラー・クイーン!
毒かと思えば甘いデザート
ダイナマイトは花火の代わり
おまえごときは秒で爆発や

うまいことツボをついたら
可愛い子猫ちゃんに変身!
けど、下手こいたら
一瞬でマグロが出現!

てか、もうその頃には
おまえごときはメロメロで
ふにゃふにゃでヘロヘロや

あの女こそがキラー・クイーン!
毒かと思えば甘いデザート
ダイナマイトは花火の代わり
おまえごときは秒で爆発や

なんしか、やってみたらええねん!
やってみたらええねん!

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Greatest Hits

Greatest Hits

 

 

『阪急電車』今津線各駅下車の旅(11)3たびめの西宮北口駅と星新一 ※完結

そして降り立ったのは、3たび目の西宮北口駅である。

 

乗換駅だし、住宅地の中の駅ということもあり、駅構内にはスイーツ屋さん、花屋さん、雑貨屋さんなどのお土産系、喫茶店などの待ち合わせ系のショップが充実している。時計広場とベンチもある。書店もある。阪急系の書店「ブックファースト」である。

せっかくなので、今津駅で話した星新一の本を今日の記念に買ってあげるよ、と娘に伝えて本屋に立ち寄る。駅構内のコンパクトな書店にも、ちゃんと星新一はある。えらいなー。

でも、文庫の棚を眺めてびっくりしたのは、そのほとんどの装丁画が、もはや真鍋博のものではなくなっていたことだ。星新一といえば真鍋博なのに……。

というわけで、棚にあった新潮文庫のうち唯一、表紙に真鍋博のイラストが使われていた『悪魔のいる天国』を買う。

 

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その場で冒頭の一作だけ読んだ娘は「1話みじかっ!」とびっくり。そうやろー。電車の中で読むのにぴったりやで。

 

有川浩のコーナーも確認したところ、残念なことに『阪急電車』がない。でも、書棚に一冊分だけ空白ができていたので、直前に誰かが買ったのかもしれない。西宮北口駅の構内で『阪急電車』を買うの、いいよね。

 

駅構内ではもうひとつ寄り道をする。日本盛の「しぼりたて生原酒直売所」だ。

日本盛といえばカップ酒みたいなイメージかもしれないけれど、灘五郷のうち、西宮郷に本拠を置く酒造メーカーであるからして、ここ西宮では地酒なのである。地元でしか買えない生原酒、フレッシュでおいしい。駅構内にこういうスタンドがあるのっていいよなあー。

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ちなみに日本盛の生原酒は甲子園でも売り子さんから買える。

これ、こないだ観戦したときの写真なのですが、野球見ながら日本酒を飲むのってなかなかいい。みんなもっと飲んでほしいなー。

 

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さすがに日も暮れて、最寄り駅に降り立つと、月がきれいに見えていた。

 

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娘はずっと「楽しかったー」と言っている。

移動距離もちょっとだし、そもそもご近所なんだけど、とっても充実した旅だった。時空を一緒に移動したような感じがして、わたしもすごく楽しかった。

 

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帰宅後は、生原酒で晩酌しながら、娘とあれこれ振り返る。本当にいい日でした。

ちなみに娘は今度、東京神田・神保町を散策したいんだって。七尾与史という作家の(わたしはよくしらない)『すずらん通りベルサイユ書房』という本の舞台が神保町だかららしい。

いつになるかなー。でも、きっと行こう。

 

 (了)

 

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

 
悪魔のいる天国 (新潮文庫)

悪魔のいる天国 (新潮文庫)

 

 

 

※後になればなるほどぐだぐだになったけど、完結できてよかった!(笑)

『阪急電車』今津線各駅下車の旅(10) ふたたびの今津駅と哀愁の阪神国道駅

久寿川駅から一駅だけ乗って、また今津駅に戻ってきた。
お腹が空いたから駅前で串カツでも食べよう、というわけである。

 

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むっちゃ歩いたのでビールがうまい。

串カツの黄金ルールは「ソースの二度づけ禁止」。テーブルの上にはソースをなみなみとたたえた箱が置いてあり、串カツをここに一度だけつける。かじったあとはつけちゃダメ。当たり前ですね。

 

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といっても、わたしはこまめにつけたいタイプなので、本当はこの方式は好きじゃなく、ソース差しに入ったソースを小皿でかけて食べたい派なんですけどね。

娘と2人であれこれ食べて、お腹が満足したら元気が出てきたし、初夏の日は長い。
せっかくなので降りそびれた阪神国道駅にも行ってみようと、ふたたび阪急今津駅の改札をくぐる。

 

そして阪神国道駅。改札を出たらいきなりこの光景である。なんかええなあ。

 

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こんな駅、降りたことないと思っていたけど、降りて気づいた。降りたことあった。
ここにはアサヒビール西宮工場があったのだ。仕事で一度取材に来た。できたてのビールがとてもおいしかった。

阪神国道」の別名があるという国道2号線沿いに、その跡地は今も寒々とその姿をさらしている。数年前まで、ここに巨大なビールのタンクがいくつも並んでいたなんて、もう想像できないな。病院が建つという話だが、いつできるのだろうか。

 

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空き地に巡らされたフェンス越しに阪神国道駅のホームが見える。なかなか味わい深い光景ではないか。

 

2号線をまたぐ高架線にはこのような巨大な表示がある。

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「阪急 阪神国道駅」という、一瞬、何を言っているのか意味が分からない表記がなんともよい。しかし、地元の人には何の疑問もない。ここにはよそ行きの顔がまるでないのだ。

 

阪神国道駅今津駅西宮北口駅の中間にあり、南行きと北行きがそれぞれの始発駅から同時に出発するので、真ん中の阪神国道駅でこのようにすれ違う。六甲山の登山ケーブルカーのようである。

 

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そして、車窓から空き地を望む。暮れてきた。

 

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(つづく)

 

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

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