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うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

ブッデンブローク家の人々

文学への目覚め、みたいなのを最初に感じたのは、多分、北杜夫の『幽霊』だった。10歳ぐらいの時、カビの臭いのする新潮文庫を叔父の書棚で見つけたので、冒頭の叙情に魅せられて持ち帰り、その退廃的な文学臭にやられた。

その後、北杜夫に影響を与えた作家ということでトーマスマンを色々読んだ。

内容は実際にはあまり理解できなかったんだと思う。今となってはほとんど内容を覚えていない。ただ「ブッデンブローク家の人々」で、兄のトーマスが歯痛でみっともなく死んだところでいたく感動したことだけはよく覚えている。

放蕩者の弟クリスチアンが兄の堅実や真面目に憧れながら反発する一方で、「跳べない」兄のかたくなさを軽蔑し、持たないこと、跳ぶことを兄への優越と感じて、逆張りをし続けることで自分のアイデンティティをかろうじて保っていたのに、最後の最後に兄はその堅実さに似合わぬみっともなさであっけなく死んでしまった。全てを遺して。「死ぬ死ぬ」と言い続けていたクリスチアンを残して。この瞬間に弟クリスチアンは兄トーマスを永遠に超えることができなくなってしまった。何においても「1枚上手」は兄だったことがここに証明されたのである。哀れなクリスチアン……。

 

ブッデンブローク家の人びと〈上〉 (岩波文庫)

ブッデンブローク家の人びと〈上〉 (岩波文庫)