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うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

雨に濡れる自由

事務所の外に出ると雨が降っていた。小雨だ。これから自転車に乗って30分ほどの道のりを移動しなければならない身として、いったんは眉間に皺を寄せて「マジか!」と叫んだものの、他に選択肢もないので自転車にまたがり、滑らないように注意しながら漕ぎ出した。しかし走り出してみると小雨の街を自転車で走るのは思いのほか気持ちいい。少なくとも蒸し暑い中を汗をタラタラ流しながら走るよりずっと快適だ。濡れたアスファルトに車のライトが反射してにじむ。昔どこかで見た景色のような気がする。夕暮れの曖昧な光と濡れた風景が溶け合って美しい。まるで過去のように美しいと思った。雨は途中で本降りになった。今日は幸いなことにパンツにスニーカーそしてリュックなので、服に気遣いはいらない。ほどなくずぶ濡れになった。髪から雨がしたたる。そんなに雨に濡れるのはいつぶりだろうか。面白かった。しかし、もし今、子どもと一緒だったらすごく困っただろうなと思った。強くなる雨脚にいらだち、滑る路面にいらだち、水しぶきを上げて横を通る車にいらだち、狭い歩道で傘を広げる歩行者にいらだつはずだ。私は自転車を止めて、もし歩いていたら歩みを止めて、娘を雨から守るものが何かないか探すために湿ったバッグの中を探るだろう。そして、何もないことに泣きたくなり、濡れた体を重々しく感じつつ、それ以上に娘が濡れていることに罪悪感を感じて途方に暮れるだろう。でも私は実際には今は1人で、1人だからずぶ濡れでもそれなりに陽気に前に進んでいる。1人なら雨に濡れる自由もあるのだ、と思った。雨に濡れる自由、雨に濡れる自由、と頭の中で繰り返しているうちに家に着いた。