うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

妊娠中の多幸感について

私が妊娠していたのは10年近く前の話だから、もう詳細なことは覚えていないのだけど、忘れることができないのが、妊娠中、特に妊娠後期の多幸感である。普通に考えれば、大きい腹は邪魔だし、歩きにくいし、服装も限定されるし、自転車も乗れないし、見た目もよくないし、いいことなんてあんまりないように思う。実際、それまで私が妊婦さんを目撃した時の主たる感想は「可哀想」で、そもそも妊娠出産にそれほど興味がなかったので、妊婦さんが視界に入る機会も少なかった。そんな私が、妊婦という立場になり、お腹の中に胎児をがいる、という事実だけでなく、誰がどう見ても腹が突き出ていて、人間であったり女であったりする前にただ「妊婦」にしか見えない身体状況になった時、まさしく不自由な状況のピークに達した時に、まるで周囲の人々が羨望のまなざしで自分を眺めているかのような、自分はパーフェクトな存在で不足していることなど何もないかのような、多幸感に包まれたのだから不思議なものだ。内分泌物質の力は恐ろしい。
太るとか痩せるとかを特に気にせずに食べたいものを食べ、面倒くさい生理もなく、家事をさぼっても、化粧をしなくても、寝坊しても、食べすぎても、「妊婦だから」と思うだけで罪悪感を感じることなく心安らかに過ごせたあの日々よ。