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うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

レトロな劇場で

雑記

友人のダンサーのショーを見に、初めての劇場に行った。
劇場の前には運河があり、生活感と切り離された暗い水面が、運河をまたぐ高速道路の光を映してゆらめいている。


昭和の古い建物をリノベーションした劇場は、ミラーボールがまず派手に回ってから幕が上がる。ステージ上では、キャバレーのラインダンサーみたいな衣装の女たちが微妙に揃わないステップで、しかし笑顔で踊っている。その少し下世話な雰囲気と館の空気はぴったりと共振していた。私は、照明の熱がこもった暑すぎる劇場の中で、じっと女の腹や脚や肩が揺れるのを見ていた。電話のベルから始まる曲では、思う通りにいかない恋に身をやつす女が髪を振り乱す様子が(多分)描写されていて、それはずいぶん昔に観た「現代能楽集 Aoi / Komachi」という舞台で麻実れいさんが演じていた六条御息所を思い出させた。

私の友人は、舞台上で踊る女たちを教えた先生であり、このショーの主催者である。小柄だが動きにキレがあり、独特のスピード感がある。また、その表現にはドロドロとしたところがあまりなく、自分の体の一部はこんな風に動くんですよ、面白いでしょう、どうぞ見てください、と客席にただクールに差し出しているように見える。と同時に、動くたびに体の周りでぷちぷちと空気の粒子が弾けているようなダイナミズムも感じさせる。たとえ女の情念を表現したとしても、何かそれを楽しんでいるような明るさがにじむ。

この友人とは小学校1年生の頃からのつきあいだけど、小学生の頃の彼女はボーイッシュというのか、スカートを決してはかないことにポリシーを持った女子だった。中学校の制服はセーラー服と決まっていたので、人ごとながらどうするんだろう、学校に抗議してスカート着用を断固拒否するのだろうかとも心配したが、制服のスカートは別段文句をいわずにはいていた。スカートを嫌がっていた理由は改めて聞いたことがないから不明だが、その彼女が、長じてこれほど女性性を強調した衣装と肉体と姿態で勝負するダンサーになろうとは、人生は面白い、というか、思えば遠くに来たものだ。