うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

『首のたるみが気になるの』

首のたるみが気になるの

首のたるみが気になるの

 

It had to be you……。
『恋人たちの予感』は大学生のときにレンタルビデオ屋で借りて観た。軽妙洒脱でウィットにあふれる会話。紅葉に染まる美しいニューヨーク。都会的なシングルライフ。キュートなメグライアン扮するサリーとちょっとむさくるしいビリークリスタル扮するハリーの恋物語。詳細はよく覚えてないけれど、すごく面白かったことはよく覚えている。だからピアノの貴公子、ハリーコニックjrが華やかにビッグバンドと競演するサントラCDも買ったのだし、それは今もウチにある。ジャケット写真のメグライアンを真似して、つばの広い茶色のフェルトの帽子をかぶって紅葉の京都にデートに出かけた恥ずかしい思い出まである。その脚本がノーラ・エフロンという人だということは知らなかった。画像検索すると、サリーのキャラクターを彷彿とさせる子どものような快活な笑顔がたくさんヒットする。

まえがきで訳者の阿川佐和子さんが「ノーラエフロンはここまでおかしなオバサンだったのか」と語る通り、エッセイの中の作者はすごくぶっ飛んでいて、ものすごく面白い。この種のエッセイにありがちな「自虐にくるんだ自慢」を感じさせない書きっぷりは爽快で、本当に面白かった。決して加齢を愚痴るだけの狭い主題の本ではないのである。人生。生まれてから死を予感するまでの女の人生すべてをカバーする壮大な物語。その物語を「首のたるみ」から書き起こすのだから、本当に素晴らしいセンス。そのハイライトは、ニューヨークアッパーウエストサイドの巨大アパート「アプソープ」への尋常ならざる愛のエピソード。彼女はこの愛するアパートで、失意から復活し、子どもを育て、働く。そして時代は移り、アパートメントとの蜜月時代が過ぎるころ、人生にもひたひたと黄昏の寂しさが迫ってくる。私はもうここで既に泣くのである。

それに、阿川佐和子さんの言葉づかいも、前書きもとってもいいのよねー。いや、でも本当に、もっとちゃっちゃと訳してちゃっちゃと出版するべきだったとは思いますけどね。特権階級っぽい明るさに嫌味がないのは人徳でしょうか。羨ましい。それとは対照的に巻末の安藤優子さんの解説は少し無理が感じられて痛々しく感じた。安藤優子さんは「全てを手に入れた人」だと思うのだけど、なんでこんなに葛藤が漏れているんだろうか。明らかにこじらせてますよね。いつも文章を読むと痛々しく感じてしまう。青汁がシャツについても気にしないなんて、嘘でしょ?

ところで、今日は髪を切りに行った。ショートカットの後頭部がみっともなく伸びて膨らんで中途半端なボブみたいになっていたので、ほぼ刈り上げぐらいの思い切った短さに、ただし前髪の長さはキープで、とオーダー。美容室の鏡というのは、実物よりも断然マシに映るか、実物よりもひどく老けて疲れて映るか、ふたつにひとつなのだけど、今日はそのどちらでもない、いつも自宅の鏡で見ている通りの自分が映っているように見えた。まっすぐに鏡を見ている時は。しかし、美容師さんと他愛もない話をしている最中にふと鏡を見ると、そこに映った笑顔は脳内イメージよりもシワシワでとても直視できなかった。笑うとシワが目立つから……。いつも周囲の人たちが見ている私はこっちなのだよな。本当に気が滅入る。

 

ところで、銀杏の落ち葉は甘い香りがする。黄葉は周囲の景色までパッと明るくしてくれるし、Autumn leavesの中で一番好きだ。