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うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

『毒婦。木嶋佳苗100日裁判傍聴記』北原みのり

事件

 すごいものを見てしまった。
「婚活詐欺」で話題を呼び、一昨年さいたま地裁で死亡判決を受けた後、
先日結審した東京高裁控訴審の判決を待つ木嶋佳苗被告のブログ。

木嶋佳苗の拘置所日記

正直、すごく面白い。

まず、男性観、そして女性観。

私はどうも、男の人に怒りを感じない性質の持ち主でして、こういう擦れ違いや通じなさが、たまらなく面白いんです。
男性に対して苛立ちを感じないから、全て許してしまう。基本的に、全て受け入れて断わらない。
生理的に無理、という初体験が、婚活で知り合った男性たちだったわけです。彼らは「スマン」の美学を知らない人たちだった。武装戦線対E.M.O.Dの抗争で、昇がやられる直前に「すまん・・・宗春・・・」という一言にジーンとくる私には、物足りない人たちだった。

私は、怒りを原動力に生きている人間が嫌なんです。その代表格がフェミニストだと思う。フェミニストって、男性に憎悪や侮蔑感を持って、女であることを女同士で語り合うのが大好きでしょ。私はそれに寒気がする。→http://blog.livedoor.jp/kijimakanae/archives/3722936.html

私が今の立場になって改めて感じるのは、やはり女性は男性には敵わないってこと。出産以外で男性が出来ないことはないでしょ。男性が本気を出したら、どのジャンルでもトップになれるでしょ。男女平等の世界になって困るのは女性ですよ。男性と女性は別の生き物だから平等なんてありえません。→http://blog.livedoor.jp/kijimakanae/archives/3460614.html


彼女のルポルタージュを書いた佐野眞一についての記述も面白い。

著者は、娘を育てたことのない男性だろうな、と思った。男性って、娘を持つことで人格の変容が起こるけれど、この著者には、女子の心に寄り添う精神的な土壌がないように感じられた。→http://blog.livedoor.jp/kijimakanae/archives/3694908.html

この見解は何がルーツになっているのだろう。彼女の父親は、木嶋佳苗という娘を持つことでどのように人格が変容したと考えているんだろうか。

佐野眞一の著書『別海から来た女』については、以下のように書いてある。

彼は、過剰な人の心の闇や血脈だのに拘泥し過ぎるあまり、大切なことを見失っている。
(中略)
それはともかく、この本で彼が、私について「おそらく」「だろうか」「思われる」「ではないか」「していたのだろう」「だろうと思った」と推測して書いた文章の全てが事実と異なっていることだけは、断言しておきます。

 
これは納得感強いなあ。私は『別海から来た女』は未読だが、『東電OL殺人事件』を読んだ時に全く同じことを思った。人の心理の無根拠な推測のあまりの多さ。「心の闇」の安易な忖度。暗いトンネルを東電OLの心理に見立てたり、無関係なネパールに飛んで彷徨ってみたり……。そんなことで事件の何かが分かるわけないじゃんか。

一審の地裁傍聴記『毒婦。』を書いた北原みのりに関しては、こんな記述。

例の「毒婦」ライター。彼女が私に関して語ることの7割は、事実じゃありません。3割は事実かって?それは、NHKのニュースで報道されるレベルのこと。彼女の取材能力は限りなくゼロに近いので、ルポルタージュを書けるライターじゃないですよ。
(中略)

毒婦ライターは、フラれた恋人に付きまとうストーカーみたい。片思いの恋愛が成就しなかった人、と言った方が正しいかな。→http://blog.livedoor.jp/kijimakanae/archives/3694884.html


訴訟の準備を進めているという記述もある。

小説を書き終えてからは、私に関して事実ではないことを吹聴し続けている、アダルトグッツショップを経営する女性ライターに対し、民事訴訟を起こす準備に明け暮れておりました。私や家族の名誉の為に、正誤をただしておかなければいけないことが、数多くあるからです。この証拠収集がいかに大変であったか、盤石の備えが出来たその顚末は、いつかここで記したい。→http://blog.livedoor.jp/kijimakanae/archives/2112262.html

「全てが事実と異なっている」佐野眞一ではなく、「7割は、事実じゃありません」な北原みのりを訴えようとしているのか…。「男性には怒りを感じない性質」だから?

『毒婦。』という本のことはもちろん知っていたのだけど、なんとなく読んでないままだったので、kindleで読んでみた。衝撃的に面白かった。というのに語弊があれば、大変興味深く、蒙を啓かれた。あれ、これもおかしいな。とにかく今まで見てなかった世界が見えた。
木嶋被告の出身地である北海道別海町に行って、知人に取材している箇所もあるが、大部分は100日にわたる裁判を、著者ならではの視点で食い入るように見つめてきた傍聴の記録であって、この本のどこに訴訟しなければいけない要因があるのか分からない。まあ、著書以外の発言を対象にしているのかもしれませんが。

北原みのりさんといえば「love peace club」のコラムを断続的に読んでただけで、著書をちゃんと読むのは初めてだけど、ほんと面白いな。「そんなこと言語化したことなかったけど、いわれてみればその通りで、深く共感する」と思える感覚についてたくさん書いある。法廷の茶番が活写されている様子も興味深い。二審の判決はもうすぐ。

 

毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記

毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記