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うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

クロード・ルルーシュ『男と女』

初めて観たのは2年ぐらい前に。DVDで。今回2度目。理由あって今回は英語字幕で観たからよく分かんないところもあったけど、ストーリーは単純だから無問題。

 

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クロード・ルルーシュ、好きなんだよね。つっても、劇場で観たのは1998年制作(日本公開は2001年らしい)『しあわせ』のみ。これが最新作なんだけど、御年77歳のルルーシュ監督、もう新作は撮らないのでしょうか。私はこの映画を、2004年に閉館した神戸のレトロな名画座西灘劇場で観たのだった。ロードショー落ちの映画が2本立てで半月ごとにメニューを変えてかかるこの映画館の、私は1998〜2001年ごろの常連さんで、いっときはほぼ皆勤の勢いだったんじゃないかな。安かったし、何も考えずに西灘劇場にかかる映画を見ることで、思いもよらないインプットができて楽しかった。発売と同時に喜び勇んで買った第一世代のiMac(懐かしきボンダイブルー!)に西灘劇場で観た映画のレビューを全部記録していた覚えがあるのだが、そのデータはもうどっかにいっちゃったな。月に4本って、私としては人生一番映画観てた時期なのだけど、今に至って覚えている作品はほんのわずかだ。内戦に人の絆が引き裂かれる痛切な物語『ブコバルに手紙は届かない』、温かい笑いのある演出で描かれたホロコーストがひときわ辛かった『ライフ・イズ・ビューティフル』、端的に言って胸糞の悪い映画なのに、白井晃のリアリティのある演技の印象が強烈で、これは逆説的な一種の恋ではないかと疑った(笑)日本映画『Focus』、アンジェリーナ・ジョリーのふっくらと割れた脣が今も眼前によみがえる『17歳のカルテ』、無軌道な若さの疾走感が印象的だったアメリカ映画の(日本映画ではない方の)『go』とか。

その中でも一番印象に残っているのがルルーシュ監督の『しあわせ』だ。なんしかヒロインのアレサンドラ・マルチネスの魅力がすごくて。お話自体は破綻もある、というか決定的に奇妙なんだけど、いやいや、そんなこというとフェアじゃないな、前提としてはとても感動的な物語なんだけど、物語を推進するという観点からは不必要と思われる余分な描写がものすごく多く、そこがかなり奇妙な印象を与えるのだ。その余分な要素というのがすべてヒロインの魅力を描くためにあるんじゃないかと疑われるところがあり(なんかいきなりミュージカル風になって踊り出したりとかさ・笑)、その描写が、作中の男という男がヒロインに惹かれる説得力となる。しかもこのアレサンドラさんはルルーシュの奥さんなんですよね(笑)。なんだろう、この「俺の好きなものを俺の発見した観点で観ろ!」と大声で主張されているような感じ。すがすがしくて、同時に映画そのものも感動的で。そういう歪みも含めて超私好みの映画だったのだった。「これは私のための映画だ」と感じた初めての作品だったといっていい。もちろん号泣つき。

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と、そういう私の性向を反映してムダに前置きが長くなってしまったが『男と女』は、まさにそういう監督らしさが出た作品だと思うのであった。「俺の好きなものを好きになれ!」という情熱。『男と女』というとダバダバダ……♪ ですから、おフランスらしい気怠い男と女のラブストーリーだ、と思うじゃないですか。いやその通りなんだけど、ストーリーは本当に単純で、男女が惹かれあい、すれ違い、結ばれる、という展開は起承転結ともいえないほど。しかしこのシンプルなラブストーリーに監督は自分の好きなものを全部ぶっ込んだんだろうと思うんですよね。その直球の欲望がいいんだな、この映画。監督の好きなものその1はヒロインの「アヌーク・エーメ」。この美しさはすごいですよ。目元の陰影を際立たせる伏し目、その伏し目を効果的に縁取るのが髪をかきあげる仕草、媚と甘えをスパイスとして加える指を噛む仕草、そして彼女の顔が最もセクシーに見える角度、アゴをクイッと上げた表情は終盤のベッドシーンでたっぷり、いやっていうほど密着目線で見せてくれます。必要以上の尺で描かれる過去の恋愛シーンでは、現在進行形では見せづらい屈託のない笑顔もしっかり描写されており、ほんと完璧ですわ〜。
好きなものその2は「車」。相手役のジャン・ルイ・トランティニヤンはレーサーという設定で、ルマン、そしてモンテカルロラリーの2つのレースの描写にもかなり尺を割く。恋愛映画の登場人物だからっていって恋愛ばかりにかまけているわけじゃねえんだぜ! とばかりにスピード感たっぷりに描写されるレースシーンは、本当に楽しそうで、車なんて特に好きでもなんでもない私まで楽しくなってくる。
好きなものその3は「映画」。ヒロインはどうも映画関連の仕事をしているようで、元恋人もスタントマンだったりするので映画の撮影シーンが挿入されている。楽しげな撮影シーンの躍動感がはさまれているからこそ、より際立つ美しい風景描写の数々。哀愁ある港町、一篇の詩のような砂浜、雨に煙るパリ……。その映像美の背景から「こんなキレイに撮れる! いいでしょ? もっとある! こっちもいいでしょ!」と主張されているようで……いい! この情熱が、言い換えると「愛」なんだな。というわけで愛が横溢した映画だと思う次第。

実際、今観ても全然古びた感じがないし。アヌーク・エーメのファッションなんて、これが50年前の映画とはちょっと信じられないほど今でも通用する感じよ。ムートンコート買いたくなっちゃうこと必至。でも、ムートンはすらりとした長身でないと着太りする危険アイテムなので、私は手を出しませんけども。

 

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