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うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

とても今日的な秀作『グローリー/明日への行進』

映画

glory.gaga.ne.jp

[2014アメリカ 監督:エヴァ・デュヴァネイ キャスト:デヴィッド・オイェロウォオプラ・ウィンフリートム・ウィルキンソンティム・ロス

よい映画でした。公民権運動の偉大な指導者として知られるキング牧師を、1965年3月の「セルマの大行進」と、その成果としての投票権法成立を軸に描く物語。予告編では傑出した人物の英雄譚に見えるのだけど、実際に本編を見ると、公式サイトでエヴァ・デュヴァネイ監督が「キング牧師という神聖不可侵の偶像の覆いを剥ぎ取り、彼を血の通う生身の人間─欠点や迷いを抱えながらも、周囲の人々の尽力によって支えられた不屈の闘志を持つ人間として描き出したいと思った」と語る通り、決して英雄的ではない部分も淡々と描かれている。
その力強いスピーチで自ら作り上げた「英雄としてのキング像」は人々を鼓舞する一方で自分や周囲の人々を傷つけ、時には死に追いやる武器にもなる。それが本当に正しいことなのか、迷い、苦しみながらも前に進む姿は、確かに私たちと地続きの人間なのだ思わせてくれるリアリティがある。

映像には時折、その出来事が起こった時刻と内容をタイプライターの打鍵音とともにレポートのように差しはさまれる演出(ルパンのオープニングのタイトルバックのような)が加えられているのだが、これは、この映画の脚本が「当時、FBIはキング牧師の一挙手一投足を監視しており、彼の日々の生活から、人生の決定的瞬間までを記録した17,000ページに及ぶファイルが現在も残されている。このFBIの監視記録を元に書かれた(公式サイト・プロダクションノートより)」という経緯から生まれた演出であるようだ。FBIという権力による常軌を逸した異常な監視が皮肉にもこの映画のリアリティを支えているというわけだ。

クライマックスの州議事堂前の牧師の演説は大変感動的。ジョンソン大統領が高らかに合衆国憲法の精神を謳う演説も。そして、アカデミー賞主題歌賞のテーマソング「Glory」も。しかし、この感動で大団円を迎えたわけではなく、このテーマがいまだ今日的な意味を持っているということが悲しいですね。本当に。


しかしキング牧師、このとき弱冠36歳なんですね。オイェロウォの熱演、とてもよかったです。あと、差別主義者のアラバマ州知事・ウォレスを演じたティム・ロス、本当にイヤな感じですごかったです。デュヴァネイ監督は私と同世代の女性。ブラボーです。

ところで、どっかの国の首相も国民の声に耳を傾けて、憲法の精神に立ち戻ってくれませんかね。立憲主義を忘れた暴走の末に栄光なんてありませんって。もう、味方おれへんやん。見直しましょうよ。安保法制も。国立競技場も。

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