うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

人間社会の戯画を笑う 万作萬斎新春狂言

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大阪・梅田のサンケイホールブリーゼにて「万作萬斎新春狂言2016」を観賞してきた。
野村万作さん、萬斎さん父子の新春恒例の公演、ここ5年ぐらいは見てるかな? といっても、お誘いいただくのに乗ってるだけなんだけど。私は本当は狂言はやっぱり能とセットで見たい派なので、自分から狂言だけの公演のチケットを買うことはないのだけど、そうはいっても能のチケットだってここ何年も全く自発的に買っていなくて、そういう意味では狂言2本立てのこの公演を年に1回とはいえ見に行けているののは日本の伝統文化に触れるよい機会になっている。

謡、萬斎さんのトーク、素囃子、狂言二曲……、というのが毎年恒例のプログラム。たぶん。去年のことは全く覚えてないけど。今回は以下のような内容でした。

・謡初 雪山(野村萬斎中村修一、高野和憲、深田博治、月崎晴夫)
・レクチャートーク(野村萬斎
狂言1「文荷(ふみにない)」(太郎冠者:野村満作/主:竹山悠樹/次郎冠者:石田幸雄/後見:内藤連)
・素噺子「神舞(かみまい)」(大鼓:谷口正寿/小鼓:清水晧祐/太鼓:前川光範/笛:杉信太郎)
狂言2「猿聟(さるむこ)」(聟猿:野村萬斎/舅猿:深田博治/太郎冠者猿:月崎晴夫/姫猿:高野和憲/供猿:中村修一/供猿/内藤連/供猿/飯田豪)

レクチャートークは30分弱。野村萬斎さんによる曲目解説なのだけれど、笑いを交えながら30分も1人で滔々としたトークをかませる萬斎さんの器に毎度ながら感動する。
そのトークでも「噺方にはご期待ください」と言ってはったので期待はしてたが、素囃子が本当にとてもよかった。深山幽谷を思わせるイレギュラーな和楽器のリズムは本当に心地よい……というかトリップ感が極上。私は特に硬質な大鼓の音が好きなんだけど(岩をうがつ水の音か、空気を切り裂く鳥の声か)門外漢には「適当」にやってるようにしか思えないかけ声とか、あの、独特の時間が伸縮するリズムは、なんなんだろうなあ〜。いや、かっこよかったです。

狂言はまあどちらもナンセンスで面白かったのだけど、今回はやはり後半の「猿聟」がすごくよかった。萬斎さんがレクチャートークで「猿しか出てこない狂言なんですよ。ネコしか出てこないどっかの舞台がありますが、そのずっと前からこういう曲が日本にはあったんですよね」という風に語っていた通り、本当に猿しか出てこない狂言で、キャストの「猿ぶり」が楽しい一曲なんですが、本当に最後、舞台上の萬斎さんがリアルな猿に見えてびっくり! 婚姻という人間の文化的な営みをモチーフにしつつ、登場人物(?)を猿にすることで痛烈に戯画化する感じ、まさに狂言の真骨頂といえるのではないだろうか。

恒例の新春の舞台が楽しめるのも幸せなことですな〜と思えた1月下旬。