うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

〝拝金教〟のリアル 『しとやかな獣』

しとやかな獣

しとやかな獣

 

 
[監督]川島雄三[脚本]新藤兼人[出演]若尾文子船越英二、浜田ゆう子、高松英郎、川畑愛光、伊藤雄之助山岡久乃小沢昭一山茶花究ミヤコ蝶々

アマゾンプライムビデオで、若尾文子主演の『しとやかな獣』(1962)を見た。
というのも、「映画を見て感想をいい合うサークル」的なものにたまに参加させてもらっているのだが、本作がその課題映画となっていて、既に見た映画愛好者の方々から「めっちゃ面白い!」「傑作!」と、熱い推薦の声を聞きまくったゆえ。

で、観てみると、本当にめちゃくちゃ面白かった! 
時代は高度経済成長期。物語は徹頭徹尾1DKの団地の一室だけで進むにも関わらず、上から下から隙間から、見下し、見上げ、のぞき込む多彩なカメラワークを駆使されており、ためつすがめつ……というのでしょうか、なにか観客が共犯関係に取り込まれていくような感覚がある。

そして、この世界観というのがすごく悪魔的なんですね。出てくる人がみな拝金主義に取り憑かれていて、行動原理はすべて金。そういう意味では論理が一貫していて、奇妙な説得力がある。そのゲスい論理を決してアウトロー的なゲスい文法ではなく、あくまで普通に上品な文法にのっとって語るのだ。そして、誰かが金を得るために非情な行動をすればするほど、その非情な行動を上品な論理で冷静に説明すればするほど、この物語世界の中での尊敬を勝ち得て、位(?)が上がっていくのである。

この奇妙にゆがんだ世界観は、もちろんブラックコメディとして描かれているのだけど、戦後日本にめざましい勢いで普及した拝金主義を一面ではとてもリアルに伝えている。いわば「拝金教」を描いた宗教映画といえるのではないか。

ほかにも見どころ、ツッコミどころは実に多彩で、突然挿入されるラリってるようなダンス、緊迫感を煽る斬新なお囃子のBGM、団地の窓の外に広がるホラーのような風景、すさまじい頻度で繰り出される怒濤の名台詞(ほんと台詞の素晴らしさったらない!)、若尾文子の奇跡的な美貌、すべてが素晴らしすぎて、感動にうち震えつつ爆笑した。本当に傑作。

この予告編は映画の雰囲気を正確に伝えてない(コメディ感を煽りすぎ)だけど……。
本編はもっとダークでドライ。いい感じです。アマゾンプライム会員は全員観てほしい……。

 

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