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うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

ストレスに満ちた現実を異化する『団地』

ほんと、ストレスがたまりまくっていたのですよ。

仕事が忙しいといっても作業がたまってるだけじゃなくて、日替わりで違うクライアントの全くタイプの違う取材がここんとこ毎日毎日入っていて、取材に行くと原稿書かないといけないわけなのだけど、毎日取材に出ていると書く時間がないから、日々、借金(材料が揃っているがまだ書いていない原稿をそう呼んでいる)がかさんでいく。借金5,借金6、借金7、借金8……。もうこの辺から数えるのが恐怖。

長距離移動が多くても、新幹線や特急電車なら車中で仕事できるけど、乗用車移動だと揺れて酔うからパソコン作業できないし、たいした仕事してない割に体が疲れるから、帰った後の作業がはかどらない。忙しい忙しいと思いながらも死に時間が多いので、自分の無能感が募って死にたくなる。

それに、クライアントが毎日違うから、そもそも私がそんなに立て込んでるなんてみんな思ってなさそうで催促は容赦なくくるし……。とういうか、自分のスケジューリングは自分でやってるわけで、もちろんそんなスケジュール組む自分が悪い。自業自得です、ええ。でも、やっぱ流れ上断れない仕事っていうのも多いわけで、かといってフリーランスで受けた仕事を他に振るわけにもいかず。

いろいろと悲観的な気分になるのでFacebookとか見るのをやめ、心身をリフレッシュさせるためにできるだけ朝ランとかもしていたのだけど、パソコンに向かうだけで憂鬱な気分が半端ない。これはなんか気分転換に映画でも見なければと思って「娘がかけっこ教室から帰ってくる7時半までに自宅に戻れそうな時間帯に事務所の近所でやってる映画」という条件にただひとつあてはまった映画『団地』を観に行った。

 

danchi-movie.com


観に行ってよかった。すごく面白かった。

団地って確かに呪術的で、特に、側壁に番号なんかが振られた同じ仕様の四角い建物がズラッと並ぶ昭和型団地の密集空間の中ではなにか強烈に時空が歪んでいて、その亀裂に何かがいそうだし、主役の夫婦を演じた藤山直美の頬にも、岸部一徳の下まぶたにも、何か入ってそうだ! 何、か、が、入、っ、て、い、る!!! 

基本コメディなんだけど、まあ色々と斜め上。最初は三谷幸喜みたいなやつかと思ってたけど全然違って、登場人物のセリフにも行動にもいちいち異次元方向への意外性とサプライズがあるという。でも不条理コメディかというとそんなことは全くなくて、人生の肯定感みたいな空気は茶化すことなく一貫して流れているし、「喪失からの回復」「パートナーシップ」みたいな堅いテーマもしっかりあるというね。私はその喪失に泣いたし、パートナーシップにも泣いた。

阪本順治監督は映画の公式サイトで、完全に藤山直美ありきのあて書きであり、この奇妙なドライブ感のある脚本を1週間で一気に書き上げたと語っているが、そのせいなのだろうか、レジ打ちしてる藤山直美、世間話してる藤山直美、ゴミ出ししてる藤山直美、歌ってる藤山直美、すべてが画面から飛び出しているように見えるほどのナチュラル3D感。立体的な存在感がどっしりしていて目を奪われる。

このように現実を異化した物語が鮮やかに幕切れを迎えると、私の視点もなんだかすーっと上方に引いたようで、なんやかんやのゴチャゴチャが俯瞰できたようなすごくよい気分になって、ちょっと活力が湧いてきた。

結局、帰宅後、もう終わったと思っていた原稿のやや理不尽な修正依頼がきていて、結構イライラした気分に逆戻りすることになるのだが、おかげさまでこの晩のうちに修正を完了することができて、どや! とかいいながら、その後も寝ずにこんなもの書いてるのは、どう考えてもダメなんだけど、ダメなんだけど、よかった。映画ありがとう!

 

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