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うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

黒柳徹子という奇跡『レティスとラベッジ』

舞台

もうね、最高!!

黒柳徹子さんはずっと好きだったのに、舞台は観たことなかった。「海外コメディシリーズ」の主演を長く続けていることは知ってたのに「女優・黒柳徹子」にあんまり興味がなかったのだ。でも大好きな麻実れいさんと共演される舞台の情報がツイッターで流れてきて、大阪のシアタードラマシティにも巡回されるということで、衝動的にチケットを確保した。ああ、今観といて、本当によかった!

今回の『レティスとラベッジ』は、1989年から27年間も黒柳徹子さんのライフワークとして続けてらっしゃる「海外コメディシリーズ」の第30弾記念公演。しかも、記念すべき第1作の再再演なのだそうだ。私は知らなかったけれど。原作者は、モーツァルトサリエリの確執を描いた名作映画『アマデウス』の脚本を書いたピーター・シェーファー黒柳徹子の初演のパートナーは山岡久乃で、再演のパートナーは高畑淳子、なんですって。

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「私のことを想定しながら書いたみたい」とご本人もおっしゃるほどの主人公レティス・ドゥーフェと黒柳さん本人のシンクロ具合も素晴らしければ、軽妙に笑いを誘いつつ、巧みに人生を織り込んだ脚本も素晴らしかったのだけど、もう、そんな何もかもを凌駕する黒柳徹子さんの存在感が奇跡的すぎてね……。幕が開いて、黒柳さんが舞台に姿を現したとたん、意味も分からず涙が出てきた。その姿を見ただけで涙が出てきたのは、生まれてこのかた詩人の伊藤比呂美さん黒柳徹子さんだけ。芝居自体も面白いから、めっちゃ笑うし、笑いの合間には圧倒的な存在感に当てられて涙が勝手に出てくる。もう心が震えすぎ、エクスタシーの連続でくたくたよ!

黒柳徹子さん御年83歳。さすがに滑舌も悪くなっているし、舞台を縦横無尽に走り回るというわけにはいかない。でもそれが些末事と思えるぐらい、ものすごくいい。

徹子さんが演じるのは、ロンドンの歴史的建造物のガイドのレティス。歴史を愛し、美しい文化を愛するレティスは、とある古い貴族の邸宅のガイドを担当するが、見物客を退屈させずにおかないその邸宅の貧相な歴史に辟易し、やがてオリジナルの脚本で盛大に「盛った」話を披露するようになる。その虚飾は一部の観客に熱烈に愛される一方で、歴史的事実の正確性に重きを置く観客や、市の歴史保存委員会には異端として疎まれる。しかし、そのレティスをガイド職から排除したガチガチの歴史保存委員会の職員、ロッテ(麻実れい)との間に、思いがけず友情が育っていく。

レティスは自由奔放に生きているように見えながらも自分の美意識と過去に縛られており、ロッテは現実に縛られているように見えながらも内部に現実を打破するエネルギーを貯めている。一般的には人生の選択を終えたような年齢に達した大人の女性であるそんなふたりが出会い、化学変化を起こすことで、どのように互いを肯定し、どのように新しい道を拓いていくのか。「事実の残した空白を想像で埋める」。そんなメッセージが持つ豊穣は、観客を温かく豊かな気持ちで満たさずにおかない。

カーテンコールの頃には私も泣きすぎても完全にダメな顔になってたんですが、喜劇でここまで泣いてる人他にいるだろうかと恥ずかしがりつつ周囲を見渡すと、よかった。結構いました。ボロボロに泣いている人。「そやんなー! 泣くよなー!!」と見ず知らずの彼女たちに共感のエールを飛ばして会場を後にしました。とてもよい時間でした。

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