うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

別珍の赤いスカート

むかし、といっても7、8年前のことだと思うのだけど、ふと(多分なにか写真とか雑誌とかを見て)真っ赤なスカートが欲しい! こう、ウエストがきゅっとしてふわっとした、昔っぽいやつ! と思ったことがあって、そう思うといてもたってもいられなくなって、買い物に出かけたことがある。

 

でも、私がぼんやりと思い描いていた「動脈血のような真っ赤」も、「腰がキュッで裾がふわ〜」も、当時のトレンドではなかったみたいで、知ってる店をいくつかハシゴしてもイメージ通りのスカートは見つからなかった。いい加減疲れてきたころ、レトロな雑居ビルの1階にある小さい古着屋さんを訪ねて店内をぶらぶら見ていたら、おしゃれな店員さんが「上の階の倉庫にストックを置いてあるので『こういうのが欲しい』って教えてくれたら何か探してきますよ」と声を掛けてくれた。

 

「真っ赤なスカートが欲しいんですけど」というと、待ってましたとばかりに彼女の目がキラーン☆と輝いた。そして私ひとりを店に置き去りにして倉庫に消え、数分後には両腕にたくさん赤い服を抱えて戻ってきてくれた。さまざまな赤があった。派手なプリントのものもあれば、テロンとした光沢の美しいもの、刺繍やレースをたっぷり盛ったもの……。その中に、深い赤の別珍の生地で仕立てた、広がりすぎないフレアの膝丈ぐらいのスカートがあった。ウエストにはゴムでなく、堅い堅いベルト芯が入っていて、古びた金具でひっかけて留めるようになっていた。金具はひとつしかついていないのでサイズ調整はできない。タグはなくて、どうもどこかの家庭で手作りされたもののようだった。

 

店の一角にある、半円形のカーテンレールから布を垂らしただけの試着室で、うきうきしながら試着した。着る前から分かっていたけど、それは私にぴったりのサイズだった。その日着ていた黒のタートルネックのセーターに、それはいかにも似合っていたので、もうそのままの恰好で帰ることにした。私も嬉しかったけど、店員さんも嬉しそうだった。彼女は、わたしが履いていたデニムを紙袋に入れながら「こういうふうに、ちゃんと買うべき人に買ってもらうと、とても嬉しいです」といってくれた。

 

その赤いスカートは、それから何日も続けてはいたし、はいていると何度も人に褒められた。もう似合わないからあまり着ないけど、クローゼットにひっそり吊ってあるそれが目に触れるたび、ああ、あれは私の半生の中でも1、2を争う幸福な買い物だったなーと、あの日の帰り道の高揚感を思い出す。

 

 

f:id:moving-too-much:20100101010657j:plain