うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

『阪急電車』今津線各駅停車の旅(2)宝塚南口駅の古いベンチ

 宝塚駅から宝塚大劇場に続く小道「花のみち」には、街路樹と季節の花々を植え込んだ花壇、そして宝塚歌劇の名場面を再現した銅像などもあちこちに立っている。

 緑豊かでキラキラと光が降り注ぐ、夢の世界へ誘う道だ。右手には武庫川の流れが見え、左手には、宝塚大劇場とデザインが統一された、白壁とオレンジ色の屋根のコントラストが眩しい建物群。スパニッシュ様式とでもいうのだろうか、陽光溢れる南欧の気分が漂う。

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 宝塚大劇場に入ってみる。今日は貸し切り公演の日みたいで、まだ開演まで時間があるので人はそれほど多くない。劇場内部にはスターの写真をあしらったありとあらゆるグッズを売る超きらびやかな売店などもあるのだが、娘はそちらには興味がないようで、天井にずらっと並ぶシャンデリアを見て「うわー豪華すぎる!」「宮殿みたいや〜」などとはしゃぐ。

宝塚歌劇は本当に面白いし最高なので私は娘と行きたいと思っているのだが、誘っても誘っても「興味がない」と断られる。どうして〜。

 

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 館内にいくつかあるレストランを検分したあと、結局、学食みたいな雰囲気のセルフサービスの食堂でごはんを食べる。キラキラした空間で食べる学食みたいなそば。かまぼこにちょっとヅカ風味がある。

 

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 ここで予習をしておこうと、娘から『阪急電車』を借りて、宝塚駅から電車に乗り合わせた男女がなれそめる淡いラブストーリー「宝塚駅」を読んでみる。想像していたよりずっと気恥ずかしい話で、なにかこっちが照れる。でもまあ、こういうオールドファッションな物語は確かに、時代錯誤の歌劇を奇跡のように維持し続け、古き良きハイカラな空気を21世紀まで律儀に保存し続けている宝塚に似合う気もする。

 

 そのまま宝塚南口へ向けて歩く。

 広い広い武庫川を、宝塚駅を出た阪急電車が横切っていく。

 川をわたる橋から、橋桁の陰で本を読んでいる人が見える。

 宝塚の空は広い、と来るたびに思う。

それは街の真ん中にこういう広い川があって長い橋がかかっているからだ。視界をさまたげる建物のない広い空がいつも確保されていることは、この街の大きな財産といえるだろう。

 

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 橋を渡ると宝塚南口駅はすぐそこだ。駅につながったショッピングモールは、昔の遊園地のレストランみたいな赤いテント地の屋根を張った通路がぐるりと建物を取り囲んでいてすごくレトロ。こんなんまだあるんやーとちょっと感動。娘がそのそばの古いベンチを指さして、「これは本に出てたやつ!」とちょっと興奮して教えてくれる。色あせたピンクとブルーの四角が交互につながったプラスチックのベンチ。

 「へー、そうなんや。これが本に出てくるのー」と感心したけど写真を撮るの忘れた。撮っておけばよかったな。赤いテント地の天井も、ピンクとブルーのプラスチックのベンチも、きっとすぐに跡形もなくなくなっちゃうのだから。

 

(つづく)

 

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

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