うだうだと考える日記

読んだ本や観た映画、日々の雑事のあれこれ ネタバレはないはず。

『阪急電車』今津線各駅下車の旅(8)西宮北口でタコ焼きを食べる

西宮北口駅に戻ってきた。

 

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西宮北口駅は、東西の神戸線、南北の今津線が交差する乗換駅だが、今津線の線路はこの駅で分断されていて、北行き、南行きはそれぞれ違うホームから折り返し運行されている。

 ホームから階段を上がると、上階は広いフロアになっていて、東西南北にそれぞれに改札がある。どの出口も雰囲気が似ていて、もともと方向音痴のわたしは絶対にここで方向感覚が狂ってしまう。

 

大学生の頃は西宮球場がまだあり、球場のある南側はとても殺風景だったので、店が密集した北側と間違えることはなかったが、阪神・淡路大震災後にごちゃごちゃした古い市場が整理され、再開発ビル「アクタ西宮」ができ、西宮球場跡にイオンモールと阪急百貨店がくっついた巨大な商業施設「西宮ガーデンズ」ができ、オペラを上演できるホールを備えた「兵庫県立芸術文化センター」ができ……と、駅のまわりが続々と新しい建物で埋められてゆくにつれ、どんどん方角が分からなくなっていった。

 

しかし、ここではタコ焼きを食べるというミッションがある。小説に登場するカップルがここでタコ焼きを食べるからである。いや、その前に、どっかの通路から、どっかのビルの屋上にある鳥居を見つけなければならない。作中では、大学生の男子が気のある女子と仲良くなる口実として、通路から見える「ビルの屋上の鳥居」を「ちょっと妙な光景」として見せるシーンがあるのだ。

 

該当頁を読むと、明らかに西宮北口駅からアクタ西宮へ至る通路を指しているようである。とはいえ、アクタ西宮に至る通路はビルの2階の高さしかない。そこからビルの屋上なんて見えるかなあ、なんて思いながらキョロキョロしたら、あった。普通にあった。
(写真は、アクタの上階から撮ったものです)

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鳥居を見た娘は大興奮。
「ほんとにあった! あった!」と叫ぶ娘とともに、ビルが見えるエスカレーターを無意味に2往復してしまった。


ビルの屋上に鳥居があるのは珍しいことではないし、それをことさら珍しいもののように描くこのシーンには少々違和感を感じるが、ビルの屋上を眺めるのはわたしも好きだ。たとえば神戸には中国資本系のビルが多いので、神戸市役所の展望ロビーあたりから周囲を見下ろすと、屋上に中華っぽい意匠の祠?のようなものがあちこちに見える。神戸っぽいなあ、と感じる風景のひとつである。

近年屋上緑化が増えたとはいえ、オフィスビルの屋上はまだまだ殺風景なものが多い。そんな中、地上からは見えない屋上にあえてカラフルな意匠が施されているのを見ると、隠された愛を見つけたような気分になって、ちょっと嬉しくなってしまう。

 

興奮を少し冷ましてから、「フードコートのタコ焼き屋」を探してアクタ東館の方に行ってみる。
アクタにフードコートなんてあったっけなーと思いつつ、あるとしたら1階だと思いエスカレーターで下に降りるが、いくつかの飲食店とコープさんの食品売場しかない。もう一度2階に上がると、あった。コープさんの日用品売場の中に、唐突に小さいフードコートがあった。へええええ。知らなかった!

わたしたちは勇んでタコ焼き屋に駆け寄ったが、誰も店員はいなかった。

 

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なんそれ! めちゃ適当やな!(笑)

 

隣のお茶碗売場で「自分が使うとしたらどのお茶碗がいいか」を娘と話しながら10分少々待ったら、日本語が少々カタコトの店員さんが戻ってきた。外国人スタッフがタコ焼き焼くのか〜と妙なところで感動。一皿250円。おいしかったです。

 

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念願のタコ焼きを食べながら、改めて店内を見渡してしみじみした。

まるで古い商店街のような雰囲気ではないか。

 

わたしの学生時代、まだアクタ西宮はなかった。ここら一帯は古い商店がごちゃごちゃに並んだ「戦後」みたいなエリアだったのだ。アーケードのある公設市場があり(市場といっても卸ではなく小売市場である)、しかし、八百屋や肉屋のようないわゆる市場らしい商店は軒並みシャッターを下ろしたままで、かなり寂れた雰囲気だった。その暗い通りの奥には「隠れ家」的なアジアン居酒屋があって、ちょいちょい友人たちと訪れた。店内には各国の雑貨が所狭しと並び、水槽には熱帯魚が泳いでいて、元バックパッカーといった風情の店主がいて、いつも大学生で賑わっていた。

こういう店も、こういうエリアも、いつかなくなるのだろうと当時から漠然と思っていたけれど、その後すぐに阪神・淡路大震災がこのエリアに壊滅的な被害をもたらすことになるとはもちろん想像していなかった。

そして震災から6年を経た2001年、地域再開発でこのビルが建った時には、あまりの風景の激変ぶりに驚いたものだ。しかし、今ではそのアクタ西宮が既に古びて、古い商店街みたいな雰囲気になっている。

 

タコ焼きを食べ終えたわたしたちは西館にも行き、ジュンク堂書店に『阪急電車』が置いてあることを確かめ、無印良品で靴下を買い、また駅に戻った。

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(つづく)

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

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